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レベッカの横幅2.17メートルをこえる一大絵巻、蛇腹折りです

| 2024年04月24日 05:00 | 吉村正臣 |

Rébecca Dautremer レベッカ・ドトルメール(フランス)

Une toute petite seconde
ほんの一瞬

フランス語:翻訳付
出版社:Sarbacane

レベッカ・ドトルメール(1971年生まれ)は、プロヴァンス地方の都市ギャップ出身。すぐれたイラストレーターを輩出するパリの国立装飾美術学校を卒業。教授陣はすぐに彼女の才能を認め、イラストレーターになるように導きました。

彼女のイラストは通常、グワッシュで描かれます。早くから写真に興味を持っていたことがイラストレーション作品に大きな影響を与え、特にライティングに重点が置かれています。1996年絵本デビュー。出版ごとに人気が高まり、2004年絵本L’amoureuで、フランスのすぐれた絵本に与えられるソルシエール賞に輝きます。その後は作品集が出版され、原画のコレクターも存在するなど、現代フランスを代表するイラストレーターです。

おもて面は横幅2.17メートルをこえる一大絵巻、蛇腹折りです。うら面はこの大絵巻を、そのままモノクロの線画で描かれています。そして、この物語に登場する100の動物たちに1-100までの番号が記載されています。
この大絵巻の物語は、付属の小冊子に100の動物たちの肖像画とエピソードが書かれ、これによって物語の全容がわかります。
ダイナミックな絵、愛嬌のある動物たちのイラスト、そしてお話、それぞれに楽しめる壮大な作品です。

主人公のジャコミニュス・ゲーンズボローは幼いころ、バルコニーの階段を転倒し、片足が動かなくなります。事故の瞬間、彼の周囲では何が起こっていたのか。
100の登場人物とその物語が、出版社のことばを借りると「ブリューゲル風の一大絵巻」として完成しました。ジャコミニュスの人生を変えた同じ一瞬を、他の人々はどう過ごしていたのか。驚き、喜び、怒り、戸惑い…それぞれの一瞬の物語が、他の誰かの物語につながり、大きな広がりとなり、一瞬が永遠の時間となって描かれています。

2019年イラスト・ユーロで紹介したレベッカ・ドトルメールの絵本<Les riches heures de Jacominus Gainsborough>と同じ主人公で、その中で、起きた事故の顛末を、ここで描かれています。合わせてご覧いただくとより楽しいでしょう。

<翻訳の一部>   翻訳:泉りき

プロローグ(著者による前書き)

この大型本を手にしてくださったあなたへ。どんな本だろう、開いてみたい!と興味を持っていただいたことに感謝します。お礼を言うのは、この本がほかのものとずいぶん違っているからです。この本は「レポレロ」といいます。レポレロ。きれいな名前だと思いませんか。お菓子の名前あるいはイタリアの子犬の名前みたい…でも違うんです。レポレロは本の一種で、ひと続きになった一枚の絵が、折りたたみ式で収められています。

折りたたまれたどの面を広げても、たった一枚の絵なのです。そう、一枚です。だけどその絵は、ふだん見ているものよりも、ずっと大きいことに気づくでしょう。絵の完成には、この本のタイトルのように「一瞬」どころか、ずいぶん時間がかかりましたが。一分、一時間、一日…もっとかかりましたが、かかった時間はそれほど重要ではないのです。だって描いている間、とても楽しかったので。

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