ヨーロッパの一流イラストレータ イタリア、フランス、ベルギー、ドイツで活躍中のアーティストを紹介
   
SSL グローバルサインのサイトシール
 

2014年ボローニャ絵本原画展に入賞 会場で見て感心した

| 2022年12月10日 19:10 | 吉村正臣 |

Amin Hassanzadeh Sharif  アミン・ハッサンザデ・シャリフ (イラン)

L’ARBRE BLEU
青い木

l'arbre bleu表紙

フランス語 翻訳付
出版社: PASSEPARTOUT

1979年生まれ、イラン出身のグラフィックデザイナーでイラストレーター。母国で大学教授としてグラフィックデザインを教えていましたが、ボローニャの美術アカデミーで学ぶことを決意し、2011年イタリアへ。絵本は世界各国で翻訳されています。2007年ベオグラード・イラストレーション・ビエンナーレ「金のペン賞」、2014年ボローニャ絵本原画展に入賞しました。現在もボローニャに在住し、活動しています。

2016年春のボローニャ原画展で、この絵本のイタリア語版を見つけ、ついに待望のフランス語版が出版されました。絵本に描かれた青い大木が象徴するのは、絶対的な権力や不当な支配のもとに生きる人々が求める自由であり、解放です。王の命令により、木は軍隊によって倒されます。木を守ろうと抵抗する人々は、無力感にうちしがれます。ですが、巨木から伸びた枝が息を吹き返し、枝が木へと育っていきます。
絵本の最後の見開きで、青い木々のむこうに、王の顔が見えます。あちこちに再び育った青い木の前にあって、王は自らが無力であると悟る…人々の望みは、かなったのではないでしょうか。

この作品は2014年のボローニャ国際絵本原画展で高い評価を受けた作品で、会場で写真を撮り、イラスト・ユーロのサイトで紹介した覚えがあります。書店で見つけた時は驚き、うれしかったです。暗く茶褐色の石造りの建物から青い木が絡みながら生きているように動き回わる絵は奇妙で軽いショックを覚えました。全体の茶褐色にも明るく暗く深い階調をスクラッチ技法で表現しています。石畳も、人物もよく描かれ、作家の表現力の確かさを感じさせます。優秀な人と思います。

<翻訳の一部>   翻訳:和泉 りき

いつの時代のお話でしょうか。街の真ん中に、巨大な青い木がどっしりとありました。
木は空に届くほど伸びていました。その姿には威厳がありました。ほかのどの木とも違う、圧倒されるほどの力強さでした。
木から伸びた枝はどこまでも青く、周辺の家の窓や玄関を通りぬけていました。
木は、そこに暮らす人々といつもいっしょでした。住民にとって、木はこの街に、なくてはならないものでした。
誰もがこの木を、大切にしていました。
ただひとり、木をよく思わない人がいました。国の王でした。「この木には、宮廷の木々さえかなわない。どんどん伸び、はびこるではないか」。だからこそ、軍隊に命じたのです

l'arbre bleu11-650l'arbre bleu2-650l'arbre bleu12-650l'arbre bleu8-650

恐れ入ります、売り切れました。お取寄せします。
お届けには約1ヵ月後になります。あらかじめご了承ください。
お取寄せのお申し込みはhttps://illust-euro.ocnk.net/product/335