ヨーロッパの一流イラストレータ イタリア、フランス、ベルギー、ドイツで活躍中のアーティストを紹介
   
 

『2005年 ボローニャ国際絵本展』レポート
「イラスト・ユーロ」メンバー、大活躍。

| 2005年04月23日 16:49 | 吉村正臣 |

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『2005年 ボローニャ国際絵本展』が、4月13日から4日間、イタリア・ボローニャで開かれました。

会場は同市の国際見本市会場の25・26・27・28・29・30号館が、例年どおり割り当てられていました。他に、子供の教育用具などの催しも別館で催されました。

25、26号館はイタリアの出版社、関連協会のブース。
27号館はアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージランド、香港、ルーマニア、南アフリカから参加のブース。
28号館は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージランドなど上記国の一部のほか、打ち合わせや商談その他情報センターのコーナー。
29号館ではアルゼンチン、ブラジル、中国、エジプト、ギリシャ、ハンガリー、インド、イラン、イスラエル、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ポルトガル、ロシア、セネガル、シンガポール、スロバキア、スペイン、タンザニア、タイ、トルコ、ベネズエラなどのブースが並びました。
30号館は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、アイスランド、フインランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、イラン、リトニア、ノルウェー、ポーランド、セルビア&モンテネグロ、スロバキア、スロバニア、スエーデン、スイスなどの国の出版社や協会が並びました。

作家、絵本と、出版社、エージェンシー、プレス
との出会いの場

今年も世界各国の出版社や協会が、各ブースで新作をプレゼンテーションしています。

一方、出版された絵本の版権を買って自国で出版するために、新しい本や興味深い作家たちを探す場でもあり、出版関係者が、会場中を歩き回り、各ブースに入り、目についた絵本を手に取り、係員に作家や出版権についての話し合いをする姿が各所で見られました。

また、私たち「イラスト・ユーロ」のように作家のマネジメント、エージェント会社や、プレス関係の参加者も多く、名刺交換をし、作家の紹介や絵本の説明を受ける姿も多く見られました。 日本では発売されていない国々の絵本も多数あり、大変興味深い催しです。

もうひとつ、例年見られる光景ですが、作家たちが自分の作品を出版社にプレゼンテーションする場でもあります。画学生のような若者が、カルトンを小脇に、おそらく目的の出版社であろうブースに入って行き、編集担当者に絵を見てもらえるようにたのみます。そして手の開く時間を待ち、ブースの中の小テーブルでカルトンを広げ、自作を見せます。緊張した新人作家の顔がたいへんすばらしいものに思えました。

地元からばかりか、外国からも自作を持ってきて、出版社にアタックする姿もあります。通 訳を同伴の人もいて、随所で見られるシーンですが、これもボローニャ展のすばらしさです。

イタリアに絵の深さを感じる

イタリアの絵の深さ、質の高さを、今年も改めて実感しました。これは、自国での開催であり、世界中から出版社や機関がやってくるため、イタリアが国を挙げて、プレゼンテーションしている背景があるのでしょう。

前述しましたが、若者や新人たちが、自作を出版社に見せて、出版のチャンスを積極的に勝ち取ろうとしていることも、新しい絵本を生み出すことにもなっているようです。

一方、各館を見ると27,28号館の人の入りが、各段に少ないのに気づきます。特に米国の出版社が集まるゾーンは人が少ない。がらんとしている時間帯もありました。

29号館にもイタリアゾーンがあり、スペイン、台湾、韓国の出版社が、活気あるゾーンを作り、その絵本も意欲ある編集を感じさせました。

台湾の「グリム・プレス」は、もともと海外の作家を招聘して母国用に出版していましたが、積極的に外国に出していく姿勢にあふれていました。この出版社は「イラスト・ユーロ」の作家である、マリア・バッタリアさん、ジャンニ・デ・コンノさんらの作品を出版しています。

韓国の出版社たちもたいへん積極的。作家を送り込み、「イラスト・ユーロ」の私にも、作家が直接、制作にまつわる説明をていねいにしてくださいました。

さて、日本のゾーンは昨年同様、たいへん訪問者が少ないと見受けられました。また新しい絵の提言や、冒険がまったくないのではないか。昨年より規模は小さくなった、との感想でした。日本の出版社のボローニャ展への参加目的が、積極的な作家の提案や出版物の提示や、作家の発掘という以外にあるのではないか、と思われました。

作品の質についての、個人的考査

作品考査については、たいへん個人的思考であることをあらかじめ断っておきます。 (またこの考査が、「イラスト・ユーロ」の作家選定基準になっている点でもあります。)

イタリア作家の質がたいへん高い…とすでに紹介しました。その背景の一部は、ここにあるのではないかと思いました。以下に述べてみましょう。

イタリアにはストーリーある絵を描く長い歴史があります。それが、現代も空気を吸うがごとくに接しているということです。 イタリアは西洋文明の基点となった地で、美術の世界でも、まずはローマ・スタイルを学ぶことになります。

ところで、ルネッサンス時代までの美術史で登場するのは「イコン」ですが、1000年あまりの歴史があります。これはキリストの生涯をわかりやすい「絵」にして紹介したもので、平面 画で絵本の作風です。美術館でも教会でも、いたるところで見られ、そこには子供たちが、先生や親に連れられ見に来ています。日本人が日本の絵を見て育つように、「イコン」を見てキリスト教の物語を学んでいきます。 まず、ベースにそれがありあるのではないか。

たとえば「イラスト・ユーロ」のメンバーであるオクタヴィア・モナコさんの絵の、背景によく使われる金色は、イコンの金色に通 じています。 さらに「イラスト・ユーロ」とも関係のあるビンバ・ランドマンさんの描く人物はまさにイコンに描かれている人たちです。

彼ら自身は、他との比較をしたことがないし、また、あまりに身近すぎるため理解の範囲にはないようですが、彼らといっしょに絵を描き、検討する際にも感じます。また、西洋画(日本でいう)の基盤となるルネッサンスも、イタリア・ローマとフィレンツェで花開き、19世紀のフランスの台頭まで、美の基準となってきました。印象派もその後の美術運動も、根の部分はイタリアにあるといえるでしょう。

ということで、私たち日本人も、イタリアに根ざす美の基準が、ひとつの鑑賞の基軸になっているのではないかと思います。

長くなりましたが、イタリアには、この背景があり、各地にある美術学院(アカデミア)、専門学校から優れた作家が今も輩出しています。「イラスト・ユーロ」のメンバーもその流れにあります。

フランスやスペインも、たいへんいい絵を描いています。彼らは、イタリア作家とは違った、自由さを持って、新しいスタイルを作り出しています。より、現代的、都会的と言っていいのだと思います。フランスは、おしゃれで、スペインはロマンティックでしょう。

米国は、新しい国だけに歴史が浅い。そこで、西洋美術視点からの評価をするのはまちがいでしょう。たとえば「ディズニー」の絵本はまったく違った質のもので、これは、映画フイルム、アニメーションというメディアで表現されることによって、出現した絵でしょう。

「イラスト・ユーロ」の作家たちとの再会で、話題になったのは、日本のマンガとジブリ作品でした。 今や、マンガは世界共通のことばで、大型書店では「mangas」と表示されたコーナーがあり、他のどのコーナーよりも若者を集めています。

米国や日本は、絵本とは違ったメディアでの絵をマーケティング上に載せているために、ボローニャ展では活気がないのだろうと思います。ただ、日本にも西洋とは異なった美術史があります。絵で物語を説明する歴史もきちんとあるわけですから、積極的にマーケティング・ベースに載せていくことはできないものか、絵本離れの進む中、むずかしいことでしょうが。

今年も、日本人作家の入賞が多くありました。しかし彼らが、イタリアの人気作家のマリア・バッタリアさんやニコレッタ・チェコーリさんのように、日本では人気者にならない。その点、残念にも思います。 「イラスト・ユーロ」も考えねばならないところでもあるでしょう。

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入選したジャンニ・デ・コンノさんと作品『 A Jewish Father and His Three Daugters 』

>>ジャンに・デコンノさんのページにリンク

「イラスト・ユーロ」メンバー、大活躍

「イラスト・ユーロ」は、ボローニャ国際絵本展や、同じように有名な「ブラチスラバ国際絵本展」など優れた展示会で実績のある作家を日本に紹介するためにスタートしましたが、その目的どおりのメンバーがそろっていると実感しました。

まず今回のボローニャ国際絵本展2005では。2名のメンバーが入賞しました。 マリア・バッタリアさんと、ジャンニ・デ・コンノさんです。2人はイタリアを代表する作家であり、ボローニャの常連作家です。海外からもたくさんの本が出版されています。

また、各国から多数の出版社が出展している中、各所の出版社ブースで多く目に付いたのが、「イラスト・ユーロ」のメンバーである、ベルギーのカレル・クヌーさん、イタリアのマラ・セーリさん、オクタヴィア・モナコさんらの作品でした。

これは自慢ですが、わが「イラスト・ユーロ」メンバーがいなくなれば、おそらくたいへん寂しいボローニャ展になるでしょう。

なお、ジャンニ・デ・コンノさんの入選作品は、日本でも舞台でおなじみの『屋根の上のヴァイオリン弾き』。 マリア・バッタリアさんの作品は、サイトでも紹介した 『L’usignolo dell’imperatore』 でした。

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同じく入選したマリア・バッタリアさんと作品『 L’usignolo dell’imperatore 』

>>マリア・バッタリアさんのページにリンク

「イラスト・ユーロ」のメンバーではありませんが。関係のある作家であり、日本でも人気の作家アンドレ・ダーハンさんは、独自のブースがあり、おなじみの作品が、他国でも多く出版されていることを示していました。

また、日本では西村書店から出版され、第6回日本絵本賞 翻訳大賞を受賞した、前述のビンバ・ランドマンさんの作品も、多くの出版社から出版されていました。

また、ぜひ注目していただきたい出版社に、イタリアの「Arka」(アルカ)があります。 ニコレッタ・チェッコーリ、オクタヴィア・モナコ、エヴァ・モンタナーリ、マラ・セーリらイラスト・ユーロのメンバーの作品は、ここから多く出版されています。時間がなく新しい作家の話を聞くことはできませんでしたが、たいへんよい新作が出ていました。やはりすばらしい出版社でしょう。 フランスの「Pastel」「E.net Paris」も注目でしょう。

ジャンニ、マリア、ニコレッタ、元気でした

会場では、3人しか会えませんでした。
ジャンニ・デ・コンノさんとは「イタリア・イラストレーターズ・アソシエーション」と「ヨーロピアン・イラストレーターズ・フォーラム」が共催するカクテル・パーティで会いました。
入賞したことで、会場の人気を独り占めにしていました。彼を慕う、若手の作家たちも集まり、「イラスト・ユーロ」への作品のプレゼンテーションを多く受けることになりました。デ・コンノさんより、「イラスト・ユーロ」のために、たくさんの新作が提供されました。

また、マリアさんとニコレッタさんは、イタリアを代表する人気作家ですが「お互い名前は知っていたが、会ったことがない」というので、紹介することになりました。
イタリアを代表する作家が同席したということで、他の席からの視線を感じながら、なぜイタリアは優秀な作家を生むのか、教育方法は?など質問しました。
ふたりは、イタリアの作家はまわりのことがわかってないのではないか、ただもくもくと描いている。むしろ、フランスやスペインのほうが、実験をしてユニークな仕事をしていると言います。
マンガについて、マリアさんは「子供が楽しんでいて、その影響で好きになった」。ニコレッタさんは「最初は嫌いだったが、今はいいと思う」という。総じてまわりの情報に敏感ではないらしい。もしくはとらわれずに、自分流に実験を続けているのでしょう。

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マリアさん(左)とニコレッタさん(右)
マリアさんは本年度入賞。 ニコレッタさんは昨年度入賞。

>>ニコレッタ・チェッコーリさんのページにリンク

注目のビッグ・アーティスト
オレステ・ゼヴォラさん、メンバーに

昨年のボローニャ展で、最も注目した作家の一人だったオレステ・ゼヴォラさんは、以前から参加表明がありました。氏がフランスでの展覧会、アメリカでの出版、アフリカでのプロジェクトの参加などで忙しく、提供作品の整理などできず、恐縮されていましたが、アフリカから戻られ、ナポリのアトリエに招待していただきました。
この機会に訪問し、たくさんの作品の提供を受けました。 もちろん今年のボローニャ展でも、ゼヴォラさんの本が注目されていました。
ゼヴォラさんの作品とプロフィールは、整理をして約1ヵ月後にご紹介いたします。どうぞご期待ください。

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オレステ・ゼヴォラさん。アトリエにて