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「ボローニャ国際絵本原画展 2008」開催!

| 2008年04月10日 16:51 | 吉村正臣 |

3月31日から4月3日まで、イタリア・ボローニャ・フェア・センターで開かれ、出版社、バイヤー、たくさんのファンが集まりました。

●今年、会場全体が少しさみしく感じました。

なぜだろう、年々、そのきらいがあるよう思っていたのですが。
会場を見回りながら考え、二、三、思いつきました。
まず、招待作品や、特に入選作品の中に、ビッグな大物が少なくなってきた。特に今年はほんとに少なかった。ビッグな大物作家はやはり、絵が個性的で、迫力 がある。他を圧したアピール力がある。新人や若い作家は、新鮮でさわやかだが、絵のスケールが小さい。
特に今年は、作品全体がこじんまりとしたフィールドの中で、少しの違いを競っている。大胆な発想と、テクニックを見せる作家がいなかったように、私には見えました。

また、出版社の並ぶ会場でも、そ れぞれプレゼンテーション力が落ちてきているようです。新しい作家の絵本や、驚くような編集本が全くなく、昨年見た本や、本屋さんで売っているものが並ん でいました。これではボローニャに見にきた意味がない。いま、イタリアやフランスの大型の絵本ショップを見に行く方が、よほどましではないか…と思いまし た。

●三番目は、後にお話しするとして、今年の入選作品で、注目した作品を提示します。

Valerio Vidali (Italy)

都会的な静かな絵です。繊細な中に知的な雰囲気が漂っています。物語性もあり秀作でしょう。ジーっと見ていると街の喧騒を忘れた休日の一日を思い浮かばせます。入選作家の中でも人気が高い作家でした。当イラストユーロ所属です。
http://www.vivavidali.blogspot.com/

Valerio VidaliValerio Vidali
Valerio Vidali


Nicolai Troshinsky(Spain)

1985年生まれ。若い作家ですが、デッサン力のある人です。作品はコラージュで、繊細でありながらダイナミックな動きを感じる秀作です。過去の作品から見れば、安定してきたように思います。
今後大いに期待できるでしょう。

Nicolai Troshinsky


Isabelle Chatellard(France)

イラストユーロ所属の作家です。変わらず安定した、彼女らしい作品を仕上げていました。繊細で落ち着いた色合いが素敵な作品です。とりわけ構成に魅力がありました。

Isabelle ChatellardIsabelle Chatellard


Simone Rea(Italy)

動物たちを擬人化して描くユニークな作家です。ボローニャではここ数年、入賞作品の並ぶコーナーのほか、出版社が並ぶ見本市会場でも、この作家のポスター を見受けます。特徴的な作品だけに目につきます。色彩が美しい。繊細でありながら大胆な、良い作品です。
1975年生まれのますます楽しみな作家でしょう。

Simone ReaSimone Rea
Simone Rea


Yann Kebbi(France)

私の今年の一押しです。これはイラストレーションを超えてファインアートになっていると思います。アイデアといい、モノクロと色彩のバランスがいいので す。今日的でシャープです。ボローニャやパリの本屋さんで探しましたが、まだこの作家の本は出ていないようです。絶対伸びてきます。注目しておきましょ う。

Yann KebbiYann Kebbi
Yann Kebbi

●ハビエル・サバラさんが特別賞に!

ボローニャ・ブックフェアの会場では、2008年ボローニャ・ラガッツィ賞の受賞作が発表されました。「子供の詩」部門で、イラスト・ユーロの作家ハビエル・サバラさんが描いた本”SANTIAGO”(サンチアゴ)が特別賞に選ばれました。

SANTIAGO 出版社: LIBROS DEL ZORRO ROJO
テキスト:フェデリコ・ガルーシア・ロルカ
イラストレーション:ハビエル・サバラ

ハビエル・サバラ/SANTIAGO
ハビエル・サバラ/SANTIAGOハビエル・サバラ/SANTIAGO

●最後に、このボローニャが楽しめなかった理由の三番目です。

年々、日本人作家の入選が増えてきているように見受けます。
日本の関係者の努力が実り、ボローニャ国際絵本原画展の一部が日本各地で開催され、より認知されるようになりました。また、それに伴い作品出展が容易にできるようなったことが、入選者を増やす最大の原因となったのでしょうか。
大変喜ばしいことで、関係者の長年の努力に敬意を払いたいと思います。

ただ、この入選者の多さの割に、日本の出版社が並ぶコーナーが閑散としているという、この差はどうしてでしょうか。

また、作家たちは旺盛に作品を国際展に送りだし、好成績を集めているにもかかわらず、その作家たちを起用した本が、日本コーナーにない。入選作品展示場では、日本人作品に見入り、写真を撮ったりメモをする人が絶えないのに…さみしくなります。
一方、出版社側から見れば、作品に売れるパワーがないから、本にはできない…ということなのかもしれません。

しかしそうだとしても、作家は資本もないし、自らの絵を売り込む力はないでしょう。力のある側から、もう少し手を差し伸べて、共同で、ボローニャに乗り込んでくるぐらいの仕組みを作りださないと、世界的な作品が生まれない…と思いました。

「マンガ」「アニメ」が世界を制したが、その後が出ていない。作家も「ボローニャ」作風を目指すのではなく、もっと、大きな視点で頑張ってほしいなと思います。

◇ お 断 り ◇

昨年の「ボローニャ国際絵本原画展 2007」の、本サイトへの掲載ができませんでした。
会場に行き、例年のように、丹念に作品を見てきました。が、帰りの飛行機で、荷物が紛失、空港のコンベアーの前で呆然となりました。初めてではないので、 当座のものは手持ちバッグに入れていましたが、肝心のカメラ、データ、資料、メモすべて消えてしまい、記事はお休みとなりました。