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2009年の「ボローニャ国際絵本原画展」
オールドとモダンの狭間

| 2009年04月15日 11:30 | 吉村正臣 |

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2009年の「ボローニャ国際絵本原画展」は3月23日から26日まで開かれました。会場の様子は例年どおりですが、年々、入選作品が均一化。出版の現場から遊離してきたように思いました。とくに今年はその思いが深まりました。

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なぜだろう?

それは私の勝手な判断ですが・・・
一番感じるのが、一心不乱に絵の具を塗りつけた絵が少なくなった、ということです。絵の具を塗りつけたからと言っていい絵ができるとは限らない、ですから、いい絵が減ってきたというわけではありません。
絵の具を塗る行為は、結構力が必要です。腕を動かし体を疲れさせる、熱い行為です。そんな熱が、絵にこもっています。そこが、たいへん人間的な、もう少し言えば動物的な仕業かなと思うのです。

逆に、大変さわやかで、クールな現代感覚を表現する絵が多くなってきている。言葉になりにくく申し訳ありませんが、スピード感、透明感、シャープさ・・・という美しさです。
このボローニャでは3、4年前から多くなってきたようですが、イラストレーション界から見ると、ずいぶん以前からその流れはありました。とくに、商業イラストレーションはそうです。が、絵本の場合、遅れてやってきているように思います。

本は、物語があり、そのドラマを説明する役割があるため、絵をあまり単純化、象徴化すると、解説するという役目が果たせなくなるのでしょう。
また、大方の絵本が子供向けで、単純化には、子供の想像力がついて行けないため、敬遠される。さらに、購入決定者は、親もしくは祖父母など年長者となるため、その人たちの絵の感性が、購入決定となります。で、彼らもついていけない。
そんなことで、ボローニャの入選作品展示会場で見る絵が、そのまま書店に並ぶことが、非常に少ないことになります。

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かつて、4、5年前までは、ボローニャの入選作品にほぼ該当する絵本が、本屋さんで探すことができたものです。
もう少し大胆に言えば、会場の中でも、入選作品展示会場で見た作家の絵本が、かつては、書店がプレゼンテーションするホールで見つけることができました。入選作品・入選作家と、出版社の新作発表とが一体となっていた、だから書店の並ぶホールででも、あの作家の本はこれだ・・・と、思わずうれしくなることがありました。
ところが、最近は、入選作家の本が、書店が並ぶホールにかつてほど見つからない。書店ホールと、入選作品展示ホールが分離しているように思えます。
作家デビューする前の新人の登竜門となってしまっているよう。そんなことで、アート性の強い作品が入選し、出版現場と遊離してきたかな・・・と思いました。
私の友人で、数多くの絵本を出版し、ボローニャ出品の常連であるイタリア人作家は、「ボローニャにはもう出さない」と言います。

旧来からの手法で描かれた絵を重視する必要はない、アート性の強いものもすばらしい。が、旧来手法には、もっと現代にアピールする斬新性を、アート性の強いものは子供・年長者を引きつける歩み寄りの表現力を必要とするのではないかと思います。

今年の会場から選んだ、私の注目作品をあげてみました。


Igor Maier イゴール・マイヤー(ドイツ)

1982年 キルギスタン出身
一押しです。というより飛び抜けていて、この人しかいなかったのではないかと思いました。
若い作家ですが、しっかりしたデッサン力をもち、構成力もすばらしい。古い手法ですが、新しくおしゃれに見せるテクニックがあります。
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平野 はるひ(日本)

大阪出身
丁寧な作品で、エッチングのシャープさとともに持つあたたかさが、グァッシュとその色合いでさらに深くなっているようです。構成も安定しているので、安心して見ることができます。日本人の作品だからでしょうか。
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小松 おさむ(日本)

1948年 東京出身
描き込まれた絵の分野で、よかった絵でした。この方の、もっと明るい作品を見たいなとも思いました。
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Martina Merlini マルチナ・メルリーニ(イタリア)

1986年 イタリア・ボローニャ出身
奇妙な顔だったから選びました。何度見ても、何だろう・・・と気になってしまい、私を離してくれなかったのです。今日性を代表しているかな。
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Fereshteh Najafi フェレシュテ・ナジャフィ(イラン)

1974年 イラン出身
もっともオールドスタイルな作風でした。このような作品も大事にしておきたい。
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Tommaso Nava トマソ・ナヴァ(イタリア)

1981年 イタリア・カントゥ出身
たいへんモダンな作品です。肉筆とコラージュの組み合わせが美しい。
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Glenda Sburelin グレンダ・スブレリン(イタリア)

1972年 イタリア・ポルデノーネ出身
このぐらい強い独自のシーンを見せると、作家の世界観を認めざるを得なくなります。
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Valentina Sozzi ヴァレンティーナ・ソッツィ(イタリア)

1981年 イタリア・ブレーシァ出身
これも、今日的な絵でしょう。コラージュの楽しい作品です。
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Arianna Tamburini アリアンナ・タンブリーニ(イタリア)

1984年 イタリア・ウルビーノ出身
省略が楽しい絵です。周囲にデザインされた文字と相まって、おしゃれな絵にしています。
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Valeria Valenza ヴァレリア・ヴァレンツァ(イタリア)

1977年 イタリア・カリャリ出身
2005年「ボローニャ国際絵本原画展」入選した、イラスト・ユーロ所属の作家です。
絵本にもっと使えばいい作家と思います。
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ヴァレリア・ヴァレンツァのページ


Monica Zani モニカ・ザーニ(イタリア)

1965年 イタリア・ファエンツァ出身
しっかり描かれたよい作品と思いました。非現実的空間性が想像力をかき立てます。背景に塗られているクリーム色の壁でしょうか?が一連の作品の特徴となっています。クリーム色を塗る下に、新聞紙か雑誌をひいたのか、プリントしたのか、クリーム入りの絵の具の下から文字が見え隠れします。これが、壁の奥行き感や重厚性をもたせているよう。なかなか達者な作家です。
Monica

※イタリア人作家が多くなっていますが、これは偶然です。