デッサン力に優れた作家、男の小さな人生が素晴らしい

｜ 2013年04月06日 13:43 ｜ 吉村正臣 ｜

Joanna Concejo ジョアンナ・コンセジョ（ポーランド/フランス在住）

monsieur personne　　　　　　出版社：Éditions du Rouergue
ムッシュ・ペルソンヌ

フランス語

なかなか個性的な絵で、フランスでは人気作家です。パリの絵本見本市（Salon du livre et de la presse jeunesse Seine-Saint-Denis）で、サイン会などに出て、テレビのインタビューを受けている姿を見ました。
鉛筆で非常に細かく、また大胆にデフォルメして､描くべき主体を際立たせます。人の顔に、憂いが、優しさがあります。また人生が、人となりが描かれ、深い味わいを感じます。絵の発想もよく、不思議な世界に導きます。色合いもすごくきれいで、大人の絵本として上質でしょう。この作家は随分デッサンの勉強をしてきたのでしょう、きっちりと正確に描く力を持っています。たくさん出版していますが、その良さは崩れず貫かれています。この絵本は、ある男の小さな人生が描かれています。

＜翻訳の一部＞

人も犬も建物も、似たり寄ったりの、何の変哲もないただの街で、
ご近所と言葉を交わさないことが、ごくあたりまえの街で、
いつも、空がセメントのように濁った色をした街で、
よく雨が降る、とてもよく降る街で、
ひとりの男が生活している。冴えないようすで。
人々は、彼のことを気にとめていない。
たまにではあるが、最近、街に住みだした人がたずねることがある：
「あのひと、誰？」
だがすぐさま、彼のことに見向きもしなくなる。

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