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ボローニャ国際児童図書賞・ラガッツィ特別賞作家が描いた秀作

| 2014年06月27日 09:09 | 吉村正臣 |

Martin Jarrie マルタン・ジャリ(フランス)

La vie des gens
さまざまな人生

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フランス語 翻訳付き

マルタン・ジャリは、フランス・アンジェ芸術学校を出た後、広告や編集の仕事をし、フランスばかりか、アメリカでも大きな評価を受けました。1990年以降、パリに住み制作活動を続けています。2011年ボローニャ国際児童図書賞・大賞、13年ボローニャ・ラガッツィ特別賞を受賞。今やヨーロッパの大作家です。
この絵本は、2002年、マルタン・ジャリは、パリ郊外に住む15人に「あなたの宝物を見せてください」と頼み、彼らの顔と宝物をデッサン・撮影し、それを作家のフランソワ・モレルに送りました。画家と作家は、自由に意見を出し合い、本の構想を練ります。
そしてひとりの人間の人生を語るために、住民の顔とありふれた彼らの宝物、どちらも同じ価値で扱おうと決め創作したものです。

物語:1 『ポレット(女性の名前)』     翻訳:泉 りき


ぶたの貯金箱。これが夫・ミシェルからの最後の贈り物。陶器でできた小さなぶたの貯金箱(たぶん陶器ね)。手持ちの硬貨が増えすぎたら、貯金箱に入れるんだよ、とミッシェルは言った。

いつか、貯金箱がいっぱいになったら、かなづちで割って、そのお金で旅行だ。世界一周だって夢じゃない。あと二年もしたら、退職だからと…。かわいそうなミシェル!バハマにタイ、ボラボラ島やタヒチ島、モルディブの島々、中国の万里の長城だって見ることができたのに…。

世界一周のスタートは、大西洋に面したフランスのラ・ボールだった。いい天気だったわ。海岸に出て、私は靴を脱いで裸足になり、ミシェルはネクタイを外し、リラックスした。夕方になって、おみやげもの屋に立ち寄ったとき、この貯金箱を見つけたの。彼が買ってくれたわ。プレゼントに。夕食はムール貝と、デザートにティラミスをひとつ注文した。私、そのときはじめて、ティラミスを食べたのよ。

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その夜のことは、今でもはっきり覚えているわ。部屋に戻ると、夫がおなかが痛いと言い出した。そんなことは、今までなかった。私はムール貝のせいかな、と思った。彼はティラミスを食べなかったから。でも、ムール貝ではなく、別の病気だったの。3か月後、ミシェルが亡くなり、私はひとりになってしまった。夫がくれた貯金箱を見ると、泣いていた。ぶたの背中に涙をこぼすと、噴水みたいに広がった。

しばらくすると、私の母親がわりの女性が、夫と死に別れた。本人はショックだろうが、私より17も年上なんだから、ありうる話よね。
彼女を慰めようと、いっしょに旅をしているの。飛行機で、隣同士の席に座ると、私はつい言ってしまう。「そこには、ミシェルがいるはずだったのに」。
「わかってるわ」と答えるかわりに、彼女は黙っている。
彼女はある日「90歳になるまでに、万里の長城に行きたいもんだわ」と言った。連れて行くなんて、一言も言ってないのに。

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