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’11年のボローニャ受賞作。斬新なイラストで人気。絶版となりました、これ1冊です。

| 2018年07月14日 05:00 | 吉村正臣 |

Jean-François Martin
ジャンフランソワ・マルタン(フランス)

FABLES ÉSOPE
イソップのお話

Jean-Fran腔is Martin1

フランス語  翻訳付
出版社:Editions Milan

絶版

2011年ボローニャ・ラガッツィ賞、2012年イラストレーション・グランプリ(フランス・ムーラン)を獲得した絵本です。たいへんヒットした絵本ですが、現在絶版です。斬新なイラストが、イソップの寓話の現代的で新しい側面を表現した、と高い評価を得ました。

ジャン=フランソワ・マルタンはパリ生まれ。Ensaama Paris(国立高等工芸美術学院)で学び、有名出版社Bayardのグラフィック・デザイナーを経て、イラストレーターになりました。グラフィック技術の高さが評価され、フランス、英国、米国の新聞や雑誌にイラストレーションを提供。特に米国の広告美術、イラストレーションの賞をたくさん受賞しています。毎年のように絵本も出版され、書店でも数多く見かけます。

おなじみイソップのお話ですが、皆さんがご存じのものと筋書きが少し異なっているかもしれません。それぞれの物語の最後に、教訓が書かれています。我慢、待つこと、欲を持たず現状に満足すること、争わないこと、慎重であることなどです。私たちがはっとさせられることばかりです。またこうした価値観から縁遠いようなフランスでは、ジャン=フランソワ・マルタンのイラストにより、新鮮なものとして受け入れられたのでしょう。

動物たちの擬人化は、シンプルでありながら物語性を持ち、哀愁を漂わせます。1シーン1シーン、多くの色を使わず、ぼかしのテクニックを使いながら、主になるところを立体的に、周辺は平面的、背景はシルエットとして描く。またクレヨンで手書きをしているような跡を残しながら、おそらくコンピュータで色をなじませているのでしょう。
紙質の変化も出しています。この絵本自体の紙も特殊な加工紙が使われており、見た感じや手触りが少し一般紙と異なり、よい効果を生んでいます。
文字ページのレイアウトもとてもきれいです。

<翻訳の一部>   翻訳:泉 りき

オオカミと仔ヒツジ

一匹のオオカミが、小川の水を飲んでいる仔ヒツジを見つけました。オオカミには仔ヒツジを食べてしまう適当な理由が必要でした。そこで次のように文句を言いました。
「おまえ、川の水を汚したな。おれには飲ませないってことか!」とはいえ、オオカミはふだん川上のほうにいたのです。

「ちょっと口をつけただけです」仔ヒツジは答え、さらに続けます。「川下にいるぼくが、どうやって川上の水に泥を混ぜることができるでしょうか」

別の口実を探し、オオカミが言いました。「1年前、おまえは俺の親父をばかにしたろ!」

「ぼくは1年前、まだ生まれてませんよ」仔ヒツジは答えます。それでもオオカミは言い返します。
「ああいえば、こういうヤツだな。だがな、オレはおまえを食っちまうだけなんだよ!」

教訓:何が何でも、悪事を働くと心に決めた者をやめさせようとするのは、骨折り損だ。

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この絵本の概要は:http://illust-euro.ocnk.net/product/91
(すみません、売り切れました。絶版で商品はありません)