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アール・ヌーボーが漂うファンタスティックな作品

| 2017年03月09日 09:37 | 吉村正臣 |

Rébecca Dautremer レベッカ・ドトルメール(フランス)

Le Bois dormait
眠ったままの森

Le Bois表紙

フランス語  翻訳付
出版社:SARBACANE

プロヴァンス地方の都市ギャップ出身。すぐれたイラストレーターを輩出するパリの国立装飾美術学校を卒業。教授陣はすぐに彼女の才能を認め、イラストレーターになるように導きました。1996年絵本デビュー。出版ごとに人気が高まり、2004年絵本L’amoureuで、フランスのすぐれた絵本に与えられるソルシエール賞に輝きます。その後は作品集が出版され、原画のコレクターも存在など、現代フランスを代表するイラストレーターです。

登場人物は、ある国の王子とその従者です。ふたりは、有名なお話『眠れる森の美女』の王女が眠ってから100年後の<森>をたずねてきます。フランスの19世紀末から20世紀の初頭を思わせる街では、誰もがすっかり眠っています。

『眠れる森の美女』では、眠っている王女を見つけ、王子がキスをすると、王女やすべての人も目覚めます。王子は王女に出会えるでしょうか。原作からぬけだした登場人物(王子)が、従者の助けを借り、100年後の世界を訪れるという設定が、作者のユーモアを感じさせます。

精密に描かれたしっかりした絵です。この作家の独特の世界が描き出されています。一部分一部分は正確。人々の顔、体、動作、背景の建物、木々、とくに空の雲の模様がリアルです。全体的には、シュールでファンタスティック。アール・ヌーボーの雰囲気が漂っています。画面全体は、褐色からグレーか?物憂い状況が、物語性を一段と高めています。大人の人も楽しめる、アート作品でしょう。

≪翻訳の一部≫  翻訳:泉 りき

絵本のページに、ふたりの人物が登場します。なにやら話しています。これからどこかへ歩いていくようです。こっそりうしろをついていきましょう。彼らの話が聞こえてきます。ふたりが話す内容に、読者も心当たりがあるかもしれません。

有名なお話『眠れる森の美女』は、美しい王女が、魔女の呪いにかかり、深い眠りに落ちてしまいます。王女だけではなく、城内すべての人々もすべて眠ってしまい、城の周辺は森と化します。そして100年後。ある国の王子が、森を通りがかります。美しい王女が眠っている、と聞いた王子は、王女に一目会おうとします。そして眠っている王女を見つけ、王子はキスをします。王女は目を覚まし、ほかの人々も目を覚まします。

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