イラスト・ユーロ 翻訳クラブ
パリで見つけた絵本の〈翻訳クラブ〉 par 泉りき

テキスト La Princesse au Petit Pois  P.29〜40

La Princesse au Petit Pois

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P.29のポイント

Lorsque la partie fut terminée, la reine annonça :

・lorsque 接続詞で「…のときに、そのとき…」

→ゲームの勝負が決まるころに、王妃は言いました。

«Votre chambre est prête, mon enfant, vous devez être fort fatiguée.
Il est temps d’aller trouver du repos.»

・mon enfant 「ほんものの王女」と名乗る女性への、親しみを込めた呼びかけです。
・Il est temps de +(動詞の不定詞)  …する時だ
このilは、非人称の主語です。意味上の主語は、王妃が語りかける自称「ほんものの王女」です。

→「寝室が整ったわ。とても疲れているでしょうから、そろそろお休みなさい」

Et la vraie princesse fut conduite à la chambre ainsi préparée.

・使役動詞のfaire(ここでは単純過去形でfut)が使われています。

→自称「ほんものの王女」は、用意された寝室に案内されました。

Il lui fallut le secours d’une échelle de bois sculptée pour parvenir tout en haut des vingt matelas,

・ここでは文章の構造を理解した上で、どの順序で説明すれば、状況がわかりやすいのかを考えてみましょう。一例を示します。

①現在の寝室の状況を説明する
tout en haut des vingt matlas 寝室のベッドには、マットが高く積み上げられている

②その場にいる自称「ほんものの王女」の状況を説明する
pour parvenir…  彼女は①に上がらないといけない

③状況の解決法を説明する
Il lui fallut le secours d’une échelle de bois sculptée そのために、彼女には木のはしごが必要だった。

 

mais elle se coucha de bonne grâce, en remerciant courtoisement la reine de tous ses bons soins.
・mais elle se coucha de bonne grâce  前文に書かれていましたが、ベッドに上がるのに、わざわざはしごを使わないといけないにもかかわらず、自称「ほんものの王女」が、その状況を受けいれたことをmaisで示しています。
・自称「ほんものの王女」を寝室に案内したのは誰でしょう?
大きな宮廷で、突然現れた見ず知らずの娘に、王妃自ら寝室へ案内したとは考えづらいです。おそらく王妃の命をうけた使用人が、寝室へ案内したのでしょう。
そこでen remerciant…の部分を「王妃への丁重な感謝のことばをことづけました」としました。

→ベッドにはマットが高く積み上げられていました。そこへ上がるには、木のはしごが必要でしたが、いやな顔もせず横たわりました。使用人には、王妃への丁重な感謝のことばをことづけました。

 

P.31のポイント

Le lendemain matin, lorsqu’elle parut dans la salle à manger afin de partager avec hôtes le petit déjeuner royal,

翌朝のシーンです。
・lorsque 接続詞で「…のときに、そのとき…」
・afin de+(動詞の不定詞) 前置詞句「…するために」 口語ではpourを使います。

→翌朝のことでした。王家の人々といっしょに朝食をとるために、自称「ほんものの王女」が食堂に現れました。

 

elle montra une mine pâle et chiffonnée.
王家の人びとと共にする、せっかくの朝食の場だったのに)自称「ほんものの王女」の顔色はさえず、疲れたようすでした。

 

On s’empressa de lui demander comment elle avait dormi.
・on s’empressa de+(動詞の不定詞) 「急いで〜する、(人に対して)熱意を示す」

主語のonは、誰をさすのか? onは「一般的に、人々は、誰かが、私たちは」など多用に使われます。朝食を囲んだ、王家の人びと全員とも考えられますが、とりわけ、ベッドの下に、エンドウ豆を入れた王妃をさしています。

→王妃は昨晩のことを、聞きたくてたまりませんでした。

 

«Oh ! noble reine, j’ai peine à le dire tant votre hospitalité est généreuse, mai j’ai passé une affreuse nuit ! »

・avoir peine à +(動詞の不定詞) 「~するのがつらい、~しがたい」
何をするのがつらいのでしょうか? le dire(それを言うのが)です。
このleは前文、とくに後半のcomment elle avait dormiをさしています。
「よく眠れましたか?」の問いかけには、答えづらいということですね。
・tant  副詞 「それほどに、そんなに」

→「これは、王妃さま。身に余るおもてなしを受けながら、たいへん申しあげにくいのですが、たいへんな一夜でした」と、自称「ほんものの王女」が答えます。

 

P.33のポイント

Je n’ai pas pu fermer l’œil.
Dieu sait ce qu’il pouvait y avoir sous mon matelas, je sentais quelque chose de dur, et j’ai ce matin mille bleus noirs sur tout le corps, c’est effroyable. »

ここは、自称「ほんものの王女」が、昨晩のことを語る場面です。
最後に »  guillemet(s)ギュメがあります。会話文であることを示しています。

ここでは、文章の最後だけについています。この絵本は、各ページ文頭の文字が、花文字で大きく表記されているので、美しく見せるために、最初の « は外したのでしょう。本来は« »で使います。

・Dieu sait + ce que, ce qui などの間接疑問詞 「…であることはまちがいない」
ベッドの下に、きっと何かあったのです
・il pouvait y avoirは、il y a…に、pouvoirの半過去形 pouvaitが入っています。
・mille bleus noirs 無数の青あざ

→「わたくしは、一睡もできませんでした。ベッドの下に、きっと何かあったのです。固い何かがからだに当たっているようでした。そして朝になると、からだじゅうに青いあざができていました。何てことでしょう」  としました

 

On put voir alors que c’était une vraie princesse, puisque, à travers les vingt matelas et les vingt édredons, elle avait senti le petit pois.

・この行も、主語はonです。性質は、P.31で出てきたonと同じです。
日本語で話すとき、主語は省略されることが多いです。特定しなくても理解できる場合、特定しない方がよい場合も。そんなとき、フランス語のonは便利かもしれません。

仏和辞典には「onは、動作主が示されない受動態に代わる文の主語として」と書かれています。

・puisque 接続詞 「…なのだから、…である以上」ここでは話している相手にわかってほしい、納得してもらいたい理由を述べるのに使っています。

à travers+ もの 「…を貫いて、…を通して」
高く積まれたマットレスや布団をもろともせず、その下にエンドウ豆一粒があると感じたからです。

Une peau si sensible ne pouvait être que celle d’une authentique princesse !

・ne…que 「しか…ない」

→本物の王女でなければ、これほどまでに敏感な肌を持っていないはずです。

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P.35のポイント

Ravi, le prince tomba à ses pieds et demanda sa main dans l’instant.

ravi(e) 形容詞 「とてもうれしい、大喜びの」 le princeを形容しています。dans l’instant 「すぐに」

→王子は夢見るような気持ちで、ほんものの王女の足もとにひざまずき、すぐに結婚を申し込みました。

La vraie princesse fut heureuse de lui dire oui, tant elle avait été charmée par le jeune homme depuis son arrivée au château.

・le jeune homme  le prince(王子)を言い換えて、重複を避けています。
・depuis son arrivée au châteauは、城に来てから
・avait été charmée par 受動態で、時制は大過去です。

→王女もその申し出を受け、幸せでした。城で王子を見たときから、恋していたのです。

 

Comme elle n’avait plus de famille, le mariage s’organisa sans tarder.

・ne〜plus 「もはや…でない」 彼女には家族がいなかったのです。

→王女の家族はすでにおらず、ただちに結婚式がとりおこなわれました。

 

La reine, en son cœur, se réjouit de sa petite ruse.

さてこの行は、王子の母である、女王についての描写です。
・en son cœur 心の中で
・ruse 名詞(女性名詞)「策、たくらみ、かけひき」

王妃は、マットレスの下にエンドウ豆をしのばせ、突然、やってきた女性が、ほんものの王女かどうか、確かめました。なかなか知恵の働く人物です。その親心?を「たくらみ」と呼ぶのか…物語の登場人物に対して、どんな印象を持つかは、人それぞれです。その判断を読者にゆだねるためにも、sa petite ruseを「ちょっとした思いつき、機転」などの表現にとどめました。

→王妃は、思いつきが実を結んだことに、心から喜んでいました。

 

P.38のポイント

Ce fut un jour magnifique, dont le royaume devait se souvenir pendant des décennies.

・関係代名詞dontが使われています。dontを使わず、本文を書き換えてみます。
le royaume devait se souvenir de ce jour magnifique pendant des decennies.
本文にはなかったdeが出てきます。
se souvenir de(ひと/もの) 「~を覚えている」
「~を」にあたるのがdontの前にある、un jour magnifique( すばらしい一日)です。

→結婚式の当日は、すばらしい一日でした。王国の人たちは、長く記憶にとどめたことでしょう。

 

La mariée ravit toute la cour par sa beauté et la delicatessen de sa mise.
・la mariée  新婦となる王女をさします。
・動詞ravir 「魅了する、うっとりさせる」
新婦である王女は、la cour(宮廷)を魅了しました。par 以下の要素で

 

L’amour qui illuminait ses yeux la rendait plus rayonnante encore, et sa robe fut admirée par toutes les jeunes filles à marier de la cour.

→新婦である王女は、洗練された容姿で宮廷中を魅了し、そのドレスは、結婚を控えた、若い女性たちのあこがれの的となりました。

 

De son côté, le prince sentit le bonheur l’envahir, car il avait trouvé son âme sœur, la princesse qui était vraiment digne de lui.

ここで、王子の視点に変わりました。de son côté「一方」
・接続詞car が使われています。原因や理由を明らかなときに使います。
一方、理由がまだ明らかでない場合は、parce queを使います。

→心から愛する女性にめぐりあい、その女性こそ、王子にふさわしい<ほんものの王女>だったからです。

 

P.40のポイント

Quant au petit pois, il s’en alla rejoinder les trésors du Cabinet royal, où il est toujours exposé aujourd’hui…si personne ne l’a pris !

・Quant à 前置詞句「…に関しては、…はどうかというと」
エンドウ豆はどうなったかといえば

・s’en aller (ここでは単純過去形でs’en alla) 「行く、行ってしまう、立ち去る」
この動詞より、あとにつづく動詞rejoindreが意味上重要です。ここではles trésors du Cabinet royal(王立博物館のコレクションに)「加わる」ことを意味します。
・Cabinet royalは、Cが大文字ですから、固有名詞と考えます。
王立宝物館、王室博物館などでいかがでしょうか。
・où以下の時制は、現在形です。しかもaujourd’huiとありますので、作者の視点は、物語から離れ、読者と同時代にあるとお考えください。

→あのエンドウ豆は、王室博物館のコレクションに加わりました。
今も展示されているはずです。誰かがとったりしないかぎり。

 

終わり

 

<ポイント1>

この絵本の文章は、1行あたりが長く、挿入句が入り込んでいます。正確に意味を理解し、翻訳するのは骨が折れます。文章を区切り、それぞれの役割をつかむことが必要です。

<ポイント2>

日本語タイトルのつけ方

(A)原題を忠実に訳した例
『エンドウ豆の上の王女』『エンドウ豆の上に寝た王女』

(B) 物語の主要要素を取り出した例
『エンドウ豆と王女』『王女とエンドウ豆』

基本的には、全文を通して読み直してみて、ご自分の考えでおつけになるとよいでしょう。

(A)は、やや説明的ですが、読者は読む前からほぼ予測がつきます。一方 (B)は、読んでみないとその中身が分からない、やや突き放したような感じがあります。ただ、何だろう?と興味をそそる効果もあります。

また、まったく違って『王子様のお嫁さま探し』とか『わがまま王子とほんもの王女』のように、かつての翻訳タイトルにとらわれず、物語の中身を生かした、今日的なタイトルもよいかもしれません。

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このNO.5の原稿は、2016425日に書いたものです。
この絵本の解説と他の絵は:http://www.illust-euro.com/?cat=177
この絵本のお取寄せは:http://illust-euro.ocnk.net/product/263

 

お断り
翻訳クラブでの翻訳は、同好メンバーの勉強や研究のために行っているもので、商業目的ではありません。
La traduction français-japonais fait partie des exercices pratiques de Honyaku Club, non pas à but lucratif, ni commercial mais juste pour apprendre la langue française.
The French-Japanese translation is part of practical exercises Honyaku Club. It is for study purpose only, not for profit or commercial.