① P.15のポイント
Honnête et malin, Issun répondit: から、5行目の、je m’en vais.までが、一寸法師の台詞となっています。
主語の前の、形容詞は主語を形容しますから、Honnête et malin、正直でかしこいは「一寸法師」のことですね。
その街を見に行きます・・・と言っています。
領主さんは、宝物を手放さないだろう。
きみは、打ちでの小槌を持ったまま。僕も、この小さな身体を守る。
そしてAinsi, nous serons quittes. と言います。
Ainsiは、「そんなわけで・・・、だから・・・」
quittesは、形容詞quitteです。もとの意味は(借金などを)返したです。
nous serons quittesは、直訳すると「私たちは、貸し借りなしでしょう」です。
互いに自分のものを手放さないから、鬼の提案した取引は成立しない、だから自分は取引に応じない、という意味です。(注意:動詞quitterと間違いやすいので、気をつけてください。)
そして
Boonne journée,
別れの言葉ですね。「じゃ、さようなら」ていねいに言えば、「よい日でありますように」
je m’en vais.
「行くよ」 と、お椀の船で、街に向かって、進みました。
s’en aller でpartirとほぼ同じ意味です。口語でよく使用します。
単純未来形が使われているか所があります。それは、意志がはっきりしていることを示しています。前ページで鬼が、宝物を取ってこい!と命令しているので、その反論として、ことわりの意志を、きっぱり示したわけですね。
② P.17のポイント
このページの絵は、「大江戸橋図」のようです。橋の形、手前の屋台、人々の織りなす喧噪などそっくりです。ただ、よく見ると、変わったいで立ちの人も交じっています。外国人作家が見た日本の古い時代なのでしょうか?この絵本の代表的なページでしょう。
一寸法師は、ついに町にやって来ました。商人や、行き交う男女、子供たち、馬や鳥・・・当時の大都会が描かれています。
Ça remuait et ça s’agitait : celui-ci courait, cell-là criait et tous manquaient d’écraser le petit Bôshi.
なんという騒々しさ、人々が忙しく往来し、声を発し、働いています。みんな、一寸法師に見向きもしない。危うく踏みつぶされそうになりながら、飛び跳ね、動物の足の間や、人々の足の間をかいくぐっていました。
③ P.19のポイント
Issun Bôshi trouva la plus belle demeure qui puisse exister et se mit à crier :
一寸法師は、今までに見たこともない美しいお屋敷を見つけ、叫びそうになりました。
先行詞が最上級またはそれに準じる言葉である場合、関係代名詞の後ろの動詞が接続法になります。ここではla plus belleという最上級が、先行詞に含まれているので、qui以下が接続法になっています。
時制は、主節は「単純過去形」、従属節は「接続法現在形」になっています。主節が過去で、従属節が主節と同時制のとき本来であれば「接続法半過去形」となるはずです。
しかし絵本のような子供向けの文章や、日常会話では、今日「接続法現在」と「接続法過去」しか使わなくなっています。「接続法半過去」は「接続法現在」で代用するのだそうです。ここはそのため、接続法現在になっているのですね。
一寸法師は、お屋敷に向かって、「私を雇ってください、このお屋敷で働きたい!」と、大声で頼みます。
Alertée, toute la maisonnée accourut et découvrit avec étonnement l’origine de cet étrangetapage :
Alertée は、alerterの過去分詞で文法的には「分詞構文」と呼ばれるものです。
この部分を文章に置き換えてみます。
toute la maisonnée était alertée par son cri.
屋敷中の人たちが、一寸法師の叫び声にはっとして
(この大声で)お屋敷の人々が、飛んできて、この異常な騒ぎの元を見つけた。
-À quoi sers-tu, quart de rien? lui demanda le seigneur, de haut de son balcon.
A quoi sers-tu ? 「servir à +ものやこと」 動詞の不定詞 で、(何に)役立つ、(…するのに)役立つ の決まり文句です。よく使う表現です。
quartは、辞書をよく調べると、「当直員」という訳があります。ここでは「使用人」としました。
領主が高い露台(バルコニー)の上から、一寸法師に問いかけたのですね。「(おまえはいったい何の役に立つというのだ?)=おまえに何ができる?役に立たない使用人か?」と、見下しています。
「何もできないだろう」と言われ、一寸法師は踊り出し
Très vite, tout le quartier fut au spectacle
またたく間に、町中が見世物となった。
très viteという副詞が、文頭にあります。副詞が文頭にあるとき、文全体を修飾していると考えるのが一般的です。
※このNO.3の原稿は、2015年8月23日に書いたものです。
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