① P.22のポイント
Une jeune fille apparut alors et supplia:
そこへ一人の娘がやってきました。どうやら領主のお嬢さまのようです。父親に懇願します。
Donne-moi ce petit être,
ce petit êtreは、“小人”ですが、日本語では差別的なニュアンスもあるので、その小さい者とか、あえて小さいことに触れず、「その者」とする方がよいでしょう。
ceは「この」がまず思い当たりますが、位置関係や、すでに登場したものについて訳すなら「あの」「その」が適切な場合もあります。
il me fera la lecture,
本を読んでくれるし
me tiendra compagnie.
お供もしてくれるでしょう
Épuisé par ce désordre, le seigneur céda à sa fille et embaucha Issun Bôshi.
「この混乱で、くたびれ果てた領主は、娘の願いを聞き入れ、一寸法師を雇うことにしました」としました。外の騒ぎと娘の不意の申し出に、さすがの領主もお手上げ状態だったのでしょう。
② P.23のポイント
Dès lors, Issun Bôshi accompagna partout la jeune fille.
それ以来、一寸法師はどこへ行く時も、お嬢さまのお供をしました。
Un jour, il chantai ; le suivant, il dansait…
Un jour, ….. ; le suivant, ….. le suivantは、le jour suivantと、前のjourを補って考えてください。
直訳すると「ある日は… 次の日は…」です。ここでは、歌を歌ったかと思えば、踊って見せたりもした、と訳しました。
Le temps passait et il s’appliquait à inventer tours et chansons pour distraire sa jeune maîtresse.
toursは塔ではなく、ここでは「芸」のことです。彼の若い主人は、お嬢さまのことです。お嬢さまを喜ばせようと、(オリジナルの)芸や歌づくりに取り組んだのですね。
Celle-ci était ravie d’avoir une poupée qui savait lire et penser.
字が読め、考えることのできる人形を手に入れたと、領主の娘は大喜びでした。
以下からは、単文が「,」でつながりますので、なかなか複雑です。分かりやすく、切って訳していきましょう。
1行目です。
Mais le petit homme commençait à se dire qu’il serait bien agréable d'(être juste une fois,)
se dire que+文(直説法)は、「(que以下の文章)だと思う」です。
しかし一寸法師は、commençait à se dire思い始めていたのです。何を思い始めたのでしょう?que以下のことですね。qu’il serait bien agréable=条件法現在です。
2行目
現実にはありえない仮定が、de以下に書かれます。de以下ならどんなによいだろうか、と。
d’être juste une fois, pas vraiment plus grand,
juste une foisは、せめて1度だけでも。 pas vraimentは、それほど大きくなくても。
「せめて1度だけでも、それほど大きくなくても・・・」ということですね。
3行目
peut-être un peu moins petit,
今よりわずかに大きければ
pour qu’elle le regarde autrement,
お嬢様が一寸法師を、人形ではなく、別の目で見てくれるために(一人の男として見てくれるために)
4行目
d’autant qu’elle était très jolie.
(一寸法師がそんな風に恋い焦がれるほど)それほど、お嬢様はきれいでした。
「せめて1度だけ、それほど大きくなくていいから、今より少し大きくなれば、どんなにいいだろう、と一寸法師は思い始めていました。そうすれば、お嬢様は人形ではなくて、ひとりの男として見てくれるに違いない。そんなふうに恋い焦がれるほど、お嬢様はきれいでした」としました。
この部分は、複雑な、入り乱れたような文章になっています。苦労するところですね。
③ P.25のポイント
Un jour de promenade en forêt, alors qu’Issun Bôshi…
ある日、森を散歩しながら、一寸法師は、アリと毛虫の戦いをまねしてお嬢様を楽しませていると、独特のにおいがする赤ら顔の鬼が、出てきました。
Te- ke- ke! Merci, Bôshi! Bôshi, tu m’apportes…
tu m’apportesは、現在形の文章です。「おまえはわたしにもってくる」が直訳です。
ですが、すでに持ってきているので、“もってきてくれたんだね”と過去形にするほうがよいでしょう。このようにフランス語の原文が、現在形で書かれていても、日本語として読んだとき、より自然な形にするために、行為は過去形にする場合があります。
Merci mille fois は、“千回ものお礼”ですから、“たいへん感謝する”です。
mon petit! は、文脈でおわかりの通り、一寸法師のことですが、ここでは、鬼が自分の子分として、また身体が小さいので、親しみ半分、見下し半分の呼びかけでしょうか。
A cet motsは、“言うなり…”です。
鬼は、娘をはがいじめにして、一目散に逃げて行ってしまいました。
A cet motsは決まり文句で「そう言うと、そう聞くと」です。ここでは「そう言うやいなや」としました。
一寸法師が自分のために、お嬢様を奪ってきてくれた、と鬼は勘違いしています。一寸法師に言い放つシーンは、鬼を悪者として訳すと、一寸法師とのコントラストがはっきりします。
「ありがとうよ、小さいの!俺が頼んだお宝を、ついに持ってきてくれたか。礼を言うぜ。
言うなり、オニはお嬢様を小脇に抱えて一目散に、逃げ去りました」
④ P.26のポイント
Rapide, Issun Bôshi les rattrapa, sauta, s’agrippa, griffa et mordit le colosse…
すばしっこい一寸法師は、娘をつれた鬼に追いつき、とびはね、しがつきました。
そして、力をふりしぼって、大男を爪でひっかき、かみつきました。
Rapide は形容詞です。すぐ後ろの主語を形容します。ここでは一寸法師の性質を表しています。
もし「すばやく追いついた」と、動詞を修飾するのであれば、形容詞rapideではなく、副詞
rapidementを使い、位置はrattrapaの後ろに置きます。
形容詞が主語の前に来て、文章が始まる。この絵本では何度も登場した形です。
Agacé par cet avorton, l’ogre l’avala tout rond.
Agacéは、“いらだつ”ですね。
小さな一寸法師が、なかなか抵抗をやめないので、鬼はいらだち、彼をまるごと飲み込んでしまいました。
≪参考≫
Issun Bôshi, Bôshi, il, cet avorton…
l’ogre, le colosse…
一寸法師や鬼をあらわす単語が、さまざまに出てきました。これは、すでにおわかりのように、同じ単語の重複を嫌うための言い換えです。日本語でもそうですが、フランス語も同じです。
このilは、だれを指すのかな・・・と迷うときが多々あります。前の文章をよく読んで、ヒントを探しましょう。
さて、一寸法師は、鬼に飲み込まれてしまいました。どうなるのでしょうか?
※このNO.4の原稿は、2015年8月30日に書いたものです。
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