イラスト・ユーロ 翻訳クラブ

i minuscule 3

パリで見つけた絵本の〈翻訳クラブ〉 par 泉りき

テキスト i minuscule NO.2〜3  P.12〜P. 20

Rebeka Elizegi 4

 

 

①P.12のポイント

i minuscule allait à l’école des voyelles.

i君は、母音の学校にかよっていました。

先のページから、i minusculeという表現が出てきていましたので、このあたりからは、i君とし「小文字の」を省略してもよいのではないでしょうか。

このフレーズ、またこの後も「半過去形」が使われています。1 回きりで終わる動作ではなく、過去の状況説明・情景描写で使います。過去の習慣や反復された行為にも半過去を用います。過去にしばしば見られた光景として訳した方がよいでしょう。

ですから、1度だけ行ったというのではなく、“通っていた”の方がよいでしょう。

以下に出てくるシーンもそう考えてくださいね。

 

C’est son père qui l’accompagnait. En chemin,

Il lui disait:« Méfie-toi d’y,c’est un étranger!

Il n’est pas comme nous. Avec sa jambe, il ressemble à une consonne.

Surtout, ne joue pas avec lui!»
お父さんが、i君を送り迎えをしてくれました、道すがらyちゃんには、気をつけるんだよ。変わっているからね。」と言い聞かせていました。

 

(フランスでは、小学生の子供は、保護者が送り迎えしなければなりません。登校時、また下校時に、校門付近に親が立っている風景は珍しくありません。)

あの子は、少し違うんだ。足があって、子音に似ているからね。

くれぐれもyちゃんとは、遊んじゃだめだよ。

 

Pendant la recreation, i minuscule s’amusait à la marelle avec d’autres voyelles;

y, lui,jouait tout seul au yoyo dans son coin.

休み時間に、i君は、他の母音の子たちと石けり遊びをしていました。

yちゃんは、教室の隅で、ヨーヨーをして、ひとりぼっちで遊んでいました。

「; 」ポワンヴィルギュルが出てきました。ここでは、i君が他の子らといっしょに、にぎやかに石けりをしている一方、yちゃんは…。 行為の対立をくっきりさせています。

 

 

②P.14のポイント

Mais un jour, en jouant, virgule bascula son ami i minuscule qui perdit son point.

Maisは、前ページの、楽しい遊びのシーンが、ある日、覆されることになります。その、反転するために入っています。

en jouantは、ジェロンディフですね。主節の動詞が表す行為に対して、同時になされる行為を表します。ジェロンディフには主語は明示されていません。原則として、主節の動詞の主語と同一です。この場合、主節の主語は省略されています。前ページで描かれていた「子供たちのお遊びのシーン」での「i君は、他の母音の子たちと石けり遊び」の中の『i君と母音の子たち』が主語に当たるでしょう。

動詞basculerは、突き飛ばす、突き当たるの意味です。故意に突き飛ばしたのではなく、ここでは遊んでいてぶつかった・・・と訳してみましょう。子供向けの翻訳ですから、その方が優しいと思います。

「コンマちゃんがi君にぶつかってしまい、頭の・をなくしてしまったのです。」としました。

 

Ce dernier se mit à pleurer. Quand il s’en apercervait, son père ne manquerait pas de lui remettre les point sur lui i ?

i君は、泣いてしまいました。

il s’en apercervaitは、条件法現在です。I君のお父さんはまだ、このことを知らない。だけど、もし知ったら、〜になるだろうという「非現実の仮定」の用法です。

「もし、お父さんがこのことを知ったら、必ず〜するだろう」が、この文章の骨子です。

son père ne manquerait pas de lui remettre les points sur les i !

de以下を見てください。

「必ずremettre(もと通りにする)」わけですが、どのように、もと通りにするのか? 本文remettre les points sur les iは、熟語表現mettre les points sur les iを使ったことば遊びになっています。

熟語表現mettre les points sur les iは、「細かいことまで正確を期する」を意味します。

この熟語のもとの意味は「iの点を忘れないで打つ」です。ここでは、このもとの意味から考えてください。「お父さんは必ず、i君がなくした頭の・を取り戻そうとするだろう」となります。このニュアンスを残すように訳したいものです。

 

Aussitôt, é accent aigu, è accent grave, ê accent circonflexe et leur sœur cadette, e la muette, accouruent pour l’aider, é et è lui prêtèrent leur chapeau, mais ni l’accent grave ni l’ccent aigu ne tenaient sur sa tête pointue!

Aussitôtは、すぐに、直ちに、ですね。

E家の4姉妹が、かけつけました。

最後の翻訳ですが、i君のとがった頭には、eアクサングラーブ、eアクサンテギュどちらの帽子もしっくりこなかった、おさまりが悪かった、の意味になります。

 

③P.16のポイント

 

Il essaya l’accent circonflexe, mais il resta perplexe : ce chapeau était parfait pour partir en vacances sur une île exotique, mais pour aller à l’école, il le trouvait un peu trop excentrique.

mais il resta perplexe は、前ページからのつづきです。アクサン・テギュ、アクサン・グラーブの帽子を試し、さらにここでアクサン・シルコンフレックスの帽子も試してみたけれど「perplexe=しっくりこず、ぎこちないままだった」ことをrester+形容詞で表現しています。

mais pour aller à l’école  ここのpourは目的を表す前置詞です。

その帽子は、外国の島にヴァカンスに行くには最適だったのですね。

しかし、学校に行くには、突飛な感じなのです。

 

J’ai l’air d’un Chinois ! songea-t-il. Mais un i chinois, est-ce que ça existe? Il paraît qu’en Chine, il n’y a pas d’alphabet!

avoir l’air + de 名詞(一般的にはavoir l’air +形容詞)で、「~のようだ」です。「なんだか中国人みたいだな !」となります。

Mais un i chinois →でも 中国語にiなんて

est-ce que ça existe ? →それは存在しますか?

これが直訳です。chinoisという形容詞は、中国人、中国の、中国語の、といろいろありますが、ここでは「中国語にiはあるのかな?」となります。

中国には、アルファベットがないらしい。

 

C’est son grand-père, qui avait beaucoup voyagé par courrier, qui le lui avait raconté.

,qui le lui avait raconté のleは「中国には、アルファベットがない」ことをさしています。

まとめると「そのことを話してくれたのは、郵便であちこちを旅行したiくんのおじいさんでした」となります。

<C’est + 主語 + quiの関係代名詞節> の強調構文で、~した(する)のは、~ですと訳されることが多いです。

●関係代名詞quiの前にあるカンマ「,」は、文法的には「非限定的用法」と呼ぶそうです。一般的に「前にコンマがあれば訳し下ろす」というのが法則のようです。

ここは強調構文ですので、前からうしろへ訳しませんでした。

この点について、たいへんすぐれたオンラインフランス語講座である「北鎌フランス語講座」のから引用させていただきます。http://class.kitakama-france.com/

「フランス語の場合は(おそらく英語以上に)関係代名詞の前のコンマの有無は、あまり重要ではありません。内容的に変でなければ、コンマがあっても前の先行詞に掛けて訳して構いません。」

 

④P.19のポイント

 

Un point à la ligne qui passait par là voulut aider petit i dans le désarroi. Il monta sur le dos d’i minuscule.

un point à la ligneは「ピリオド、句点」のことです。日本語では「。」にあたります。あとのほうにも出てきます。

フランス語では2行になっていますが、日本語にするときは1行にまとめた方が自然な日本語になります。

「そこを通りがかったピリオドは、困っているiくんを助けようと、iの背中に上がりました」

Celui-ci était ravi. Ce point lui allait à merveille !

Celui-ciはすぐ直前の、i minusculeですね。

「iは、大喜びでした。このプワンは、iに見事に、似合っていました。」

 

⑤P.20のポイント

D’autres points de ponctuation, des copains de point à la ligne, arrivèrent.

d’autres points de ponctuation と, des copains de point à la ligneは、同じことを言い換えているだけの同格表現です。

「ピリオドの仲間である、他の句読点も、やってきました」となります。

 

– OH! Qu’il est haut! s’exclama un point d’exclamation.

感嘆文のQu’il est haut !は、たしかに「おお、何て高いだろう」なのですが、何が高いのでしょう? i君の上にいるピリオドが、高いところにいることを指しています。

私は「おっ、ずいぶん高いところにいるじゃないか!」としました。

 

– Comment a -t-il fait pour monter si haut ? s’ interrogea un point d’interrogation.

「どうやって、そんなに高いところまで上がったんだ?」疑問符は、ふしぎに思い、つぶやいたのでしょう。

 

– Un point à la ligne sur un i, c’est inouï ! dit un tréma.

「iの上にピリオドがいるよ、これは驚いた」です。

この驚きを示すinouïは、ポジティブな意味での驚きで使われています。

Rebeka Elizegi 5

 

※このNO.2〜3の原稿は、2015年11月5日に書いたものです。

この絵本の解説と他の絵は:http://www.illust-euro.com/?cat=136
この絵本のお取寄せは:http://illust-euro.ocnk.net/product/112

次回 NO.4は、P.22からです。

お断り
翻訳クラブでの翻訳は、同好メンバーの勉強や研究のために行っているもので、商業目的ではありません。
La traduction français-japonais fait partie des exercices pratiques de Honyaku Club, non pas à but lucratif, ni commercial mais juste pour apprendre la langue française.
The French-Japanese translation is part of practical exercises Honyaku Club. It is for study purpose only, not for profit or commercial.