イラスト・ユーロ 翻訳クラブ

i minuscule 4

パリで見つけた絵本の〈翻訳クラブ〉 par 泉りき

テキスト i minuscule NO.4  P.22〜P.25

Rebeka Elizegi 6

 

 

① P.22のポイント

 

Mais point à la ligne n’avait pas l’habitude de l’altitude.

En hauteur, il avait mal au coeur.

・Maisは、否定の「しかし」ではなく、前に示されていた状況を受けて、転換させるために使われています。

・n’avait pas l’habitude deは、熟語表現avoir l’habitude de もの/こと あるいは動詞の不定詞「…に慣れている」 の否定の形、時制は半過去になっています。

≪Aさんの訳≫・・・「とはいえ、ピリオドくんは高いところに なれていません。

高さにクラッとして気分がわるくなりました。」

≪Bさん≫は、「高所恐怖症のため・・・」と言葉をさらに展開されました。

→とてもよい訳となっていますね。

 

Il avait le vertige! Il tomba et dans sa chute, il atterrrit sur une virgule et de point à la ligne, il devint point-virguler.

・tomba、atterrrit、devintと、ここで単純過去形が出てきました。(他の動詞は半過去形でした。)それぞれの動作が、一瞬、一瞬で終わっていくさまが示されているのでしょう。

・Il tomba et dans sa chute・・・落ちたのですが、すぐに着地するのではなく、高いところからの、ほんの少しの空間が、表現されているようです。

そこで、≪Aさんの訳≫・・・「ふらついています!とうとう落ちてしまいました。落ちたところにはカンマさんがいて、その上に乗ることができたので、ピリオドくんはセミコロンになったのです。」

→状況と動作が、とてもテンポよく描写されています。

 

 

② P.24のポイント

i minuscule se remit à pleurer.

i君が突然、泣き出しました。

なぜでしょう。失った・を補ってくれたピリオドが、急にいなくなったからです。

se remitの、“re”は再び、と言うことですね。以前にも、i君は泣いています。ですからここは「また泣き出した」とか「再び泣き出した」と、以前のシーンを思い出させるようにしてもよいでしょう。

 

Petit o voulut à son tour monter sur son dos, mais il était trop gros!

・à son tourは、「次に・・・」と言う意味です。tourはいろんな解釈がありむずかしいです。

・voulutは、vouloirの単純過去形。本来、この後ろには動詞の原形が来ます。この場合、 monterですね。その間に、à son tourが挟まっているカタチです。

日本語の場合は、次に、早速、明日等は、文頭に来る場合が多く、フランス語との違いを感じさせられるひとつです。

・son tourの 所有代名詞son はPetit oを指し、sur son dosの son はi君をさします。1行の中に son が2つあり、それぞれが別の人を言っているので、ややこしい文章になっています。

≪Aさんの訳≫「こんどは、小さなoくんがiの背にのぼろうとしましたが、太りすぎなのです!」  iの頭の・がなくなったので、o君が変わりになってやろうとしたのですね。ですが、大きすぎなのでした。

→trop grosを「太りすぎ」と翻訳されたのは、視覚的でわかりやすいです。

 

Pendant ce temps, y, qui avait de bons yeux, retrouva le point perdu. Il l’attrapa et le posa sur le dos d’i minuscule.

Pendantは、そうこうしている間に、と訳してみました。

ほかの子とちがうyちゃんは、目がいいおかげで、行方不明の「・」を見つけたのです。そしてi君の背にのせました。

・この行のポイント!  de bons yeux

目は複数形で両目としていますので、よい “bons”も複数になっています。そこで前に付く「des」は「de」になっています。複数名詞の前に形容詞が付くとdesは、「de」に変わります。

 

Il était temps! I majuscule venait chercher son enfant.

・il était temps という表現を、EXPRESSIONS ET LOCUTIONS(le robertシリーズの一冊)の辞書で調べてみました。それによれば「このままいくと、やっかいなできごとが起こりそうな、寸前のところだった」となります。

・I majusculeは、Iはiの大文字ですから、i君のお父さんのことです。

「間に合った、セーフ! i君のお父さんが息子を迎えに来たのだ。よかった、お父さんに知られずにすんだ」ということです。

・何が間に合ったのか?

ここでは、次のように考えました。P14-15に、son père ne manquerait pas de lui remettre les points sur les i !という文章がありました。「お父さんは必ず、i君がなくした頭の・を取り戻そうとするだろう」としました。

i君が・をなくし、すったもんだして、ようやく取り戻した。一見落着したところに、お父さんが迎えに来た。だからお父さんには、ことの次第を知られることなく「間にあった!」のですね。もしなくしたことを見つかっていたら、もうたいへんだったでしょう。

 

≪ご参考≫

「フランス語らしい表現とは?」

フランス語を書くとき、動詞や形容詞は、名詞で置き換える(名詞化する)と、すっきりした表現になる。これはよく言われる話です。フランス語の研究者・大賀 正喜先生の著書に「フランス語名詞化辞典」があるほどです。

日本でも、新聞や雑誌のタイトルは、名詞化して簡潔に表現していますが、フランス語の場合は、さらにその傾向が強い言語と言えるでしょう。

(例)

RFI(フランスの公共ラジオ放送)サイトの見出し

Alerte rouge à la pollution en Chine

直訳:中国の大気汚染に赤色警報

中国の深刻な大気汚染に、注意警報が発せられたということですが、上記の見出しには動詞が一切ありません。

もうひとつ、忘れられない言い回しを。
ある日、フランス語の授業にCさんの姿がありませんでした。
- C, elle n’est pas là, aujourd’hui ?  生徒「Cさんは、今日はお休みですか?」
- Non, elle est parisienne.      先生「うん、彼女はパリにいるよ」
Cさんがパリジェンヌ?どういうこと? とそのとき思いました。
でもこれ、名詞化の法則なんですね。あとでわかりました。elle reste a Paris(彼女はパリに滞在しています) とか、elle est partie pour Paris(彼女はパリに出発しました)と言ってもいいわけですが、先生はここでparisienne(パリの人、パリの女性)という名詞を使い、かっこよくまとめています。

P24

 

 

※このNO.4の原稿は、2015年11月28日に書いたものです。

この絵本の解説と他の絵は:http://www.illust-euro.com/?cat=136
この絵本のお取寄せは:http://illust-euro.ocnk.net/product/112

次回 NO.5は、P.26からです。

お断り
翻訳クラブでの翻訳は、同好メンバーの勉強や研究のために行っているもので、商業目的ではありません。
La traduction français-japonais fait partie des exercices pratiques de Honyaku Club, non pas à but lucratif, ni commercial mais juste pour apprendre la langue française.
The French-Japanese translation is part of practical exercises Honyaku Club. It is for study purpose only, not for profit or commercial.