イラスト・ユーロ 翻訳クラブ

i minuscule 5

パリで見つけた絵本の〈翻訳クラブ〉 par 泉りき

テキスト i minuscule NO.5  P.26〜P.29

P28

 

P.26のポイント

Depuis ce jour, i et y sont amis ;
y joue à la marelle avec les autres voyelles et il a invité petit i à passer les vacances dans son pays.

Depuis ce jourは、厳密には「その日以来、その日から」となります。その日から、i君と(すこし性質が違っていて、一人で遊んでいた)yちゃんは仲よくなったのですね。他の母音の子供たちといっしょに石けり遊びをします。

y ちゃんは、イラストから見ると女の子のようでしたが、男の子だったんですね、il a invité petit i となっていて、男性を示す「il」が使われ、y ちゃんは、男の子だとわかりました。

y ちゃんのふるさとで、ヴァカンスを過ごそうと、i君を誘いました。

 

En Gréce, i minuscule découvrit avec étonnement qu’y est en fait son parent!
Il fit la connaissance d’alpha, un cousin de petit a, et fit des bêtises avec bêta.

・En Gréce, ということで、yのふるさとはギリシアだったのですね。

・découvrirは、一般的に、「発見する、見つける」ということですが、ここではそれは大げさすぎるので、「わかった」との程度がいいですね。

・faire la connaissance avec 人 = 人と「知り合いになる」「仲よくなる」

・faire des bêtisesを「ふざける」「いたずらをする」としましょう。
≪Aさんの訳≫・・・「ギリシアへ行くと、小文字のiは、yくんが実は親せきだったとわかって おどろきました。小さなaくんのいとこ アルファさんとも仲よくなり、ベータさんと ふざけ合ったりもしました。」

→仲よくなる、ふざけ合うという翻訳が、フランス語の熟語表現を、物語に即して、適切なことばを選んでおられると感じました。

 

P.28のポイント

Mais à la rentrée des classes, il y avait un petit nouveau.

C’était @. Finis la marelle et le yoyo.

・このMaisは、「しかし」ではなく、場面の転換を示しています。「さて」と言ったところですね。

・un petit nouveauは、見慣れない顔、新入生がいた、ということでしょう。@君ですね。

・Finis la marelle et le yoyo=La marelle et le yoyo sont finis と書き直せます。ですから、 石けりもヨーヨーも、もうおしまい・・・ということで、遊びの内容が変わってきたのです。

Fini(e)は形容詞です。Finis のsは後ろの遊びが複数あるための形容詞に複数のsがついたモノです。「~は終わった」です。この文章のように、動詞なしで、文頭に出る場合があります。

(例)Finie la classe. 授業は終わった。

 

Toutes les voyelles se mirent à jouer aux jeux video. Désormais, I minuscule se faisait appeler irobaz ! Et meme y se mit à surfer sur le net en criant : Yaooouuuuuuu!

・se mettre à は「~しはじめる」です。

母音族の子供たちはテレビゲームで 遊び始めました・・・という訳で正しいですね。

≪Aさんの訳≫・・・今では、小文字のiは自分のことを“イットマーク”と よばせているくらいです!

(そして)yくんはネットサーフィンをするようになり、大声を上げています。「ヤッホー!」

→se faire appelerを「自分のことを~と呼ばせている」とされたのが、いいですね。他のクラスメートより一歩先を行き、誇らしげなi君を思わせます。

・irobazとは, @をarobaseといいます。i君は自分がiなので、arobaseをもじってirobazと名乗りました。

・Yaooouuuuuuu! 「ヤッホー!」という叫び声ですね、YAHOO!をもじっているようにも思えます。

 

≪Aさん≫は、「・・・おしまい!」と書かれました。

ここまで書いておられることで、Aさんらしい翻訳のしめくくりになった気がします。

 

 

  • テキスト i minusculeは、今回で修了しました。お疲れさまでした。

 

≪参考≫

“yのふるさとはギリシア”と出てきましたね。フランス語とギリシアの関係を調べてみました。
フランス語は、ラテン語の口語から変化したフランス北部の言葉が母体と言われています。

そのラテン語は、ローマを中心とした地域においてラテン人により用いられていた言語で、ローマ帝国の公用語となったことにより、ヨーロッパ大陸の西部や南部、アフリカ大陸北部、アジアの一部に伝播しました。

この過程でギリシア語から多くの語彙を取り入れ、学問・思想などの活動にも使用されるようになりました。ただしラテン語が支配的な地域はローマ帝国の西半分に限られ、東半分はギリシア語が優勢な地域でした。

西ローマ帝国が滅び、ラテン語は各地で変容していき、やがて各地の日常言語はラテン語と呼べるものではなくなり、ラテン語の流れをくんだロマンス諸語が各地に成立してきました。フランス語もその母体から生まれてきました。

ギリシア語から、多くの語彙をラテン語に受け継がれ、フランス語の中にも、その流れが残っているようで、“yのふるさとはギリシア”というのもその辺りから書かれたのではないでしょうか。フランスの子供たちには、“yのふるさとはギリシア”も唐突ではないのでしょうね。
なお現在でもバチカン市国の公用語はラテン語です。

Rebeka Elizegi 表紙

 

※このNO.5の原稿は、2015年12月10日に書いたものです。

この絵本の解説と他の絵は:http://www.illust-euro.com/?cat=136
この絵本のお取寄せは:http://illust-euro.ocnk.net/product/112

次回よりLa Princesse au Petit Poisがはじまります。

お断り
翻訳クラブでの翻訳は、同好メンバーの勉強や研究のために行っているもので、商業目的ではありません。
La traduction français-japonais fait partie des exercices pratiques de Honyaku Club, non pas à but lucratif, ni commercial mais juste pour apprendre la langue française.
The French-Japanese translation is part of practical exercises Honyaku Club. It is for study purpose only, not for profit or commercial.