イラスト・ユーロ 翻訳クラブ

La Princesse au Petit Pois 1

パリで見つけた絵本の〈翻訳クラブ〉 par 泉りき

テキスト La Princesse au Petit Pois  P.1〜6

pricesse表紙499

 

La Princesse au Petit Pois
絵:Miss Clara(ミス・クララ)
文:アンデルセン童話より
出版社:Gautier Languereau

 

≪タイトル≫

La Princesse au Petit Pois

アンデルセンのよく知られた童話です。ですから、日本でも訳され出版されています。その訳では、『エンドウ豆の上に寝たお姫さま』『エンドウ豆の上のお姫さま』の2つが一般的です。これをそのまま使うというのは、少し問題があるかも知れません。

・そのまま使うのは盗用ということになりかねません(個人が勉強のために行うことなら許されますが、商用では許されません)

・ここでは、せっかく全文を翻訳し、ご自分の言葉で物語を再現しようと勉強するのですから、自分なりの工夫のあるタイトルを見つけたいと思います。
以前に話題になりました、サン=テグジュペリのLe Petit Princeは『星の王子さま』が有名ですが『小さな王子さま」とか『リトル・プリンス』と題した訳本も登場しています。訳者の個性を込めてみましょう。

すでにある日本語タイトルは極力使わず、新しいタイトルをつけてみませんか。

まだ物語を読み、翻訳を終えていませんから、ここでは、仮のタイトル『お姫様とエンドウ豆』としておきます。最後にもう一度、考えてみましょう。

 

P.1のポイント

Il était une fois un prince qui voulait se marier.

・Il était une foisは、日本の昔話の冒頭によく出てくる、昔あるところにとか、昔々と同じような意味で、フランス語の昔話の冒頭に使われます。

その言葉を使ってもよいのですが、私は少し工夫して、このようにしてみました。

→大昔のありえないようなお話です。ある国に王子がいました。そろそろ結婚を、と願っていました。

 

Mais il était décidé à n’épouser qu’une vraie princesse,

・il était décidéは、受動態(受け身)です。

・ne… que~で「~しか…ない」です。

彼は「ほんものの王女」としか、結婚できませんでした、と能動態で訳してもよいです。

私は、受動態を取り入れて訳してみました

→でも「ほんものの王女」としか、結婚は認められませんでした。

 

car seule une fille de roi pouvait étre digne de lui.

・car はすでにみなさんに分かっている理由を述べる場合に使われます。puisqueもその傾向にあります。

理由がわかっておらず、これから説明する場合は、parce queを一般的に使います。

王子のまわりの人々は、どこかの王の娘しか、結婚の対象にならないと知っていたのですね。

→国の王である者を父に持つ娘こそ、王子にはふさわしいからです としました。

 

Au matin de ses dix-sept ans, il annonça au roi et à la reine,

ses parents, et à toute la cour rassemblée pour le fêter,

qu’il allait parcourir le monde pour trouver la véritable princesse

qui ferait son bonheur.

・roi et à la reine, ses parentsは、王様と女王様=彼の両親で、同じ内容です。

・ ferait son bonheurのferaitは動詞faireの条件法現在です。これは過去の時制における未来を表現し「幸せにしてくれるであろう本物の王女」と考えられます。

ただ王子が「幸せにしてくれる女性を」望むのは、いかがなものでしょう。

→17歳を迎えた日、王子は両親である国王夫妻と、誕生日を祝うために集まった宮廷の者たちに告げました。「幸せをつかめるよう、ほんものの王女を探しに世界を旅するつもりです」としました。

 

On fit apprêter son carrosse,
et on prépara de somptueux bagages, chargés de présents rafinés.
Le prince, revêtu de ses plus beaux atours, fit ses adieux
et promit de revenir avec l’épouse que tous attendaient.

・fit apprêterの、fitは動詞faireの単純過去形です。faire+動詞の不定形の使役表現です。「〜させる」「~してもらう」となります。ここでは「用意をさせる」です。下僕たちに準備させたのでしょう。

→それを聞いた侍従たちは豪華な馬車をしつらえ、王女に贈る高価な品物を入れた、これまた贅沢なカバンをいくつも積みこみました。

自慢の衣裳に身を包んだ王子は「皆が期待している王女を、妻として連れ帰る」と約束し、宮廷に別れを告げました。

 

 P.3のポイント

Ainsi commença un fort long voyage.

→こうして、長い旅が始まりました。

De contrées lointaines en châteaux, de vallons en montagnes,
de terres sauvages en mers déchaînées, jusqu’aux empires les plus reculés,
partout de par le vaste monde, il était décidé à chercher la perle rare,
la véritable princesse, celle qui saurait le charmer.

・de〜en・・・は、「〜から・・・へ」で、さまざまな所に旅をしたことが描写されています。

・jusqu’aux empires les plus reculés

王子の住む国から、もっとも離れた国々をさしていますが、ここは起点を明らかにせず「辺境にある国々」程度でよいでしょう。

・la perle rareとla véritable princesse とcelle qui saurait le charmer これはすべて同格で、ほんものの王女(la véritable princesse)を言いかえています。

・この文章は、前の部分が長く、重要な部分が最後に来ています。惑わされないようにしましょう。

 

Et des princesses, ma foi, il en rencontra, car le vaste monde n’en manque pas.

・前半部分 Et des princesses, ma foi, il en rencontra,
rencontraは動詞rencontreの単純過去形です。

「たしかに王子は、さまざまな王女たちに会えました」と、過去の時制で書かれています。

・後半部分 car le vaste monde n’en manque pas.

動詞manquerは現在形が使われています。しかもcarを使っています。自明の理由を説明する場合に用いられる接続詞です。

なぜ、現在形を使うのでしょう?

この世の中が広いという「事実」、広い世界では出会いに事欠かないという「事実」は物語の時代も、現代も変わることがないからです。

このように、過去時制で書かれてきた物語の中に、突然、現在形が登場するのは、珍しいことではなく、昔も今も、変わることのない事実が書かれた場合は、このようになります。

そしてこの文は、ナレーター(物語の語り手)の視点で書かれた、地の文とお考えください。

このあとの文章は、物語の状況描写で、過去時制(半過去)に戻ります。

→そして王子は、何人もの王女に出会うことはできたのですが「この人こそ!」という女性はいませんでした。

 

P.5のポイン

Il commença sa quête par les royaumes d’Orient,
où les jeunes femmes vont parées de voiles fins et de soies changeantes.

・les royaumes d’Orientは、オリエント王国とすると、特定のひとつの国をさすことになります。その場合、国名は大文字になるでしょう。ここではles royaumesと複数ですので、東方の国々です。

où les jeunes femmes vont parées de voiles finest de soies changeantes.

参加者からの質問: vont parée →être parée ではなく??vontの意味合いがよくわかりませんでした。
よく見ると、この文章も現在形ですね。現代に続く慣習だからでしょう。

正しくはご指摘通り、être paréeを使うべきところです。ネイティブによれば、書き手のこだわり、むしろ誤用に近いとのことでした。

それでは原文をどう解釈するか?ですが、ここでは以下のように置き換えてお考えください。

où les jeunes femmes vont s’habiller en voiles finest et en soies changeantes.

「(東方の国々では)若い娘たちは、ヴェールと、色がさまざまに変化する絹の衣裳をまといます。」

aller+動詞の不定詞で構成される近接未来ではありません。ここでは身につけている、身につけて出かける、などの意味です。

 

Les sultans ornaient leurs filles de bijoux précieux pour les lui présenter.

・Les sultansは、複数形です。東方の国々の国王をさします。一国の皇帝ではありません。

→父親である国王らは、高価な宝石で自分の娘を飾り立ててから、王子に会わせました。

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※このNO.1の原稿は、2016年2月1日に書いたものです。

この絵本の解説と他の絵は:http://www.illust-euro.com/?cat=177
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 次回は、La Princesse au Petit Pois  P.7〜14

お断り
翻訳クラブでの翻訳は、同好メンバーの勉強や研究のために行っているもので、商業目的ではありません。
La traduction français-japonais fait partie des exercices pratiques de Honyaku Club, non pas à but lucratif, ni commercial mais juste pour apprendre la langue française.
The French-Japanese translation is part of practical exercises Honyaku Club. It is for study purpose only, not for profit or commercial.