イラスト・ユーロ 翻訳クラブ

La Princesse au Petit Pois 2

パリで見つけた絵本の〈翻訳クラブ〉 par 泉りき

テキスト La Princesse au Petit Pois  P.8〜13

La Princesse au Petit Pois

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P.8のポイント

Mais le prince trouva que les voiles ravissants des jeunes filles masquaient des visages qui n’étaient certes pas dignes de lui.

trouverは、思う・考えるなどを意味します。動詞penserに似ています。trouverは感覚的な評価で、penserはよく考えて、理性的に判断しているニュアンスがあります。

この文のtrouverを、「気づく」と訳される方もおられるでしょう。日本の日常生活では、「気づく」でも誤りではありません。ですがここではやはり「思う」に近いです。

ここでのtrouverは、自分の判断基準に照らした評価です。物語では王子が「自分にふさわしい女性」という判断のものさしで、この国の女性たちを「~だと思った」のです。

もし、気づくという翻訳であれば、動詞はse rendre compte de や s’apercevoir de などが使われるでしょう。

1行目que以下は、少しややこしいですね。分解してみましょう。

les voiles ravissants des jeunes filles : 若い娘たちのきらびやかなヴェールは

masquaient des visages: 顔をかくしていた

・・・どんな顔かと言えば・・・qui 以下で n’etaient certes pas dignes de lui(王子には値しない)

le prince trouva que : 王子は、自分に値する顔じゃないなと思ったのです。

長い文章ですが、いちばん言いたいのは「女性たちの顔が、王子の望んでいるものではなかった」という点です。ヴェールでその顔をかくしていた、という情報は、物語の展開上、あまり重要ではありません。

→「豪華なヴェールで隠された女性たちの顔はどれも、王子が望んでいるものではありませんでした。」としてみました。

 

Et que leurs pieds menus où sonnaient des grelots cristallins n’étaient pas assez fins pour sa digne personne.

この文章の主語と動詞は、前文のle prince trouvaで、ここでは省略されています。

que以下の文章は、次のような構造になっています。主語=leurs pieds menus 動詞=n’étaient pas…となります。さらにoù sonnaient des grelots cristallinsが、主語を説明しています。ちなみにこの文章は、主語と動詞が倒置しています。

・assez +形容詞(ここではfins)+ pour 名詞もしくは動詞の不定詞で「…なので、~である」

ただしここでは否定で用いられています。

→「歩くと、水晶でできた鈴が音を立てるかぼそい足元も、王子の寵愛に値するほど、きゃしゃではなかったのです。」

 

P.9のポイント

Il poursuivit alors sa route et traversa les mers pour atteindre l’empire du Soleil-Levant, où les jeunes filles décorent leurs chignons noirs de fleurs de cerisier.

・l’empire du Soleil-Levantは「日の出づる帝国」すなわち、日本のことです。日本まで、海を越えてお姫様を探しにやってきました。poursuivre sa routeは、旅をつづけたことを意味します。

・décorent (leurs chignons noirs)de (fleurs de cerisier)で、桜の花で黒い髪を飾ることを意味します。

→海を渡り、次に訪ねたのは日の出づる国でした。
そこでは、若い娘たちは結いあげた黒髪を桜の花で飾っていました。

 

L’empereur lui-même convoqua à sa cour les meilleures familles afin de satisfaire le désir du prince.

→皇帝は、はるばるやってきた王子の願いをかなえようと、良家の者たちを宮廷に集めました。

 

Hélas, le jeune homme trouva que les kimonos parfumés dissimulaient des mains peu faites pour se poser sur le bras de son auguste personne et que les visage blanchis délicatement n’étaient pas assez raffinés pour être conduits au château du roi son père.

・前ページと同じ構造です

主語le jeune homme 動詞trouva que ~ pour ~ et que ~ pour ~

こちらも分解して考えてみましょう。

主語 le jeune homme+動詞 trouva 王子は~だと思った。

何を思ったのでしょうか。

(1)des mains peu faites pour se poser sur le bras de son auguste personne

faites pourで、pour以下に「適した、向いた」となります。ただしこの文章ではfaitesの前に否定のpeuがあります。すなわちpour以下にふさわしくない手となります。

次に、pour以下です。son auguste personneとは、著者の視点での皮肉な表現です。「彼のうやうやしい人格」すなわち王子をさします。王子の腕に添えるには、似つかわしくない手を、かぐわしい着物にかくしていたわけですね。

(2)et que les visage blanchis délicatement n’étaient pas assez raffinés pour être conduits au château du roi son père.

・les visages blanchisは、化粧で白く塗り込めたニュアンスがあります。色白の顔なら通常の形容詞blancsでよいはずです。

・pour être conduite au château は「城へ連れ帰るには」です。王子の父親である、皇帝が住む城に、自分(王子)にふさわしい女性を連れ帰ることをさします。

→ ですが、かぐわしい着物で隠された女性たちの手は、王子の腕に添えるには似つかわしくありませんでした。か細い白い顔も、父である王が住む城に連れて行くのは、役不足でした。

 

P.11のポイント

 

Il n’eut pas plus de succès dans ses recherches lorsqu’il parvint aux rives enneigées du royaume des Glaces.

・lorsque+文は、ここでは~だったその時というような意味です。

直訳すると「雪で四方を閉ざされた氷の王国に到着したときは、王女さがしには何の成果もありませんでした」となります。

このようにしてみました。
→ほんものの王女に出会えないまま、雪で閉ざされた氷の王国に到着しました。

Là, les princesses, pensa-t-il, n’étaient guère élégantes dans leurs habits de peau et de fourrure.

n’étaient guèreは「あまり…でない」です。そのあとにつづく形容詞élégantesにかかります。王女たちの革や毛皮を身につけた姿が、あまり洗練されているとは思えなかったのです。

Et leurs joues rosies par le froid ne lui semblaient pas convenir au teint délicat qu’il souhaitait pour sa future épouse.

・ne lui semblaient pasは、彼にとっては、〜とは思えなかった

・il souhaitait pour sa future épouseは「王子が未来の妻に対してのぞんでいた」

寒さで赤くなった頬は、王子が未来の妻に求める、なめらかな肌とは、違っていたのですね。

 

P.13のポイント

 

Oui, le prince était fort difficile, et peu disposé à ouvrir les yeux sur les véritables richesses de ces jeunes filles :

・le prince était fort difficile…主語はle princeですので、彼の性質を描写した文章です。

ここで、別の視点からの話となっています。

・peu (disposé)は、否定を示しています。Il y a peu〜 ほとんどない、と使われます。

・Oui,とあるのは、著者がここまで読んでくれた読者の思いを推測し「そうです。そのとおりです」と言っています。おそらく読者も、oui以下にある<le prince était fort difficile>と、感じているのでしょう、と。

→たしかに、王子は理想が高すぎました。王子は旅で出会った女性たちの魅力を、理解する気などなく、ただ自分が求める理想像にこだわりすぎたようです。

(気むずかしくて、自分の出来をたなに上げ、女性に対して要求ばかりの男性ですね…)

 

là où était la gaité, il voyait des manières trop simples ; là où était l’intelligence, il ne voyait que l’absence d’habits raffinés, et toutes les princesses du monde avaient beau se présenter sous leur meilleur jour, il ne parvenait pas à les trouver dignes de lui.

・Là は、『それ、これ』と、そこにあるものやことばかりか、以前に話題になっているものやことも示します。ここでは、今まで登場した、王子が出会った世界各地の王女たちですね。

là où était la gaité, は、陽気な女性であったとすれば

là où était l’intelligenceは、頭がよい女性だったならば

すてきな女性と出会っているのですが、王子には、その魅力が理解できなかったのです。

→たとえば、陽気な女性であったなら、不作法で気品のある物腰に欠けると感じ

頭がよい女性だったら、服装のセンスがないと、決めつけたのです。

 

・se présenter (se montrer )sous leur meilleur jourは「自分のいちばんいいところを見せる」です。

→各地の王女たちが、これ以上ないというほどおめかしをしてあいさつしても、王子は「自分にふさわしくない」と拒絶しつづけました。

 

この物語には、ストーリーの展開とともに、作者の視点や意見が、ときおり登場します。現在の人間から見たときの、王子のふるまいに対する「つっこみ」の役割を果たしています。
物語の展開とは区別してお読みください。

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このNO.2の原稿は、2016217日に書いたものです。

この絵本の解説と他の絵は:http://www.illust-euro.com/?cat=177
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 次回は、La Princesse au Petit Pois  P.15~21

 

お断り
翻訳クラブでの翻訳は、同好メンバーの勉強や研究のために行っているもので、商業目的ではありません。
La traduction français-japonais fait partie des exercices pratiques de Honyaku Club, non pas à but lucratif, ni commercial mais juste pour apprendre la langue française.
The French-Japanese translation is part of practical exercises Honyaku Club. It is for study purpose only, not for profit or commercial.