原画は、こんなに美しいものか!
絵本では感じられない、作家の息吹に触れる。
スロバキアの首都・ブラチスラバで、本年9月9日のオープニング・セレモニーによって、開会。同セレモニーは「スロバキア国立劇場」で、コンクールおよび展覧会は SNP 広場にある文化センターの2階、3階で行なわれました。
今年は、48カ国、411人のイラストレーターの作品、2966点が選ばれました。質素な展示会場に、原画だけが国単位で並べられ、国の境目に、国名・出品作家名、少しばかりの絵本が展示されているだけです。
もう一方のビッグイベント、イタリア「ボローニャ国際絵本原画展」は、圧倒的に大きい規模ですが、原画展示は一部。巨大スペースは、絵本の出版社がブースを並べ絵本を展示し、にぎやかに商談が繰り広げられています。
が、こちらは、かつてのチェコスロバキアが、チェコとスロバキアに分離独立した国ですから、まだまだ商業化の大波が寄せていないようで、会場周辺も、会場内も、たいへん静かでゆっくりと鑑賞できます。
「絵」を味わいたい人にとっては、このブラチスラバのほうが、堪能できるでしょう。
私たちが日ごろ目にするのは、印刷・製本された「絵本」です。絵は、文字がレイアウトされ、デザインの意向でトリミングされてしまっています。
いくら、最近はデザインがうまくなり、印刷技術が高くなったとはいえ、オリジナルの再現には程遠い。
やはり、原画は素晴らしい。
私たちは、時に、原画に顔をつけるばかりに覗き込み、また、数歩離れて全体を眺めます。作家が、筆を入れるとき、できばえを確かめるときと同じ距離で、同 じ息使いで、作品を共有します。それが、オリジナル鑑賞のすばらしさで、ブラチスラバでは、その空間と時間が充分に持てるのです。
筆の走り、絵の具の透明感、コラージュの材質などが、オリジナルの美しさを輝かせています。紙の質感、コンテや絵の具のていねいな塗り具合、絵本以上の感動があります。
今年の驚きは、イランの作家たちがとても優秀で あったこと。グランプリ作家ばかりか、他の作家も、民族画手法あり、超モダンなものまで、たいへん多様で、個性的。一見、アメリカ的視点から見て、閉塞さ れた国のように思っていましたが、間違っていたのではないか … 。非常に自由に、百花繚乱、それぞれの作風に花を咲かせています。
イラスト・ユーロの仲間たちでは、4名が選ばれていました。
ベルギーのカレル・クヌーさんは、前回 2003 年同様「金牌賞」に。その他イタリアのジャンニ・デ・コンノさん、オクタビア・モナコさん、フランスのナタリ・フォルティエさんが入選しました。
さて、日本からも多数が出品されていました。酒井駒子さんが「金牌賞」に選ばれておられました。ただ、イランや他の国に比べ、作風がいつも同じようで、新しいチャレンジがほしいと思いました。根本的に、絵の領域がせますぎる。
出版社の顧客ニーズの読み取りと、プレゼンテーション力が浅いのではないか、そんな気がしました。
 
金のリンゴ賞 切手になった作品
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