-
コラージュが効果的に使われている作品です。宙に浮かぶ女性の下の地面に、真珠状の粒が接着されています。大きい粒から地平線状あたりの小さい粒。大小、置く位置で広い空間を作りました。また、貴婦人は高貴な洋服をまとっていますが、この風合いに、真珠がぴったり。気品を添えます。コラージュはシュールレアリストのマックス・エルンストが使い、ピカソやブラックなども多用。イラストにもよく見られます。手で描きながらも、「異質」を組み込むことで、肉筆の惰性を防ぎ、絵に新たな価値をつけます。
-
この作家の特徴のひとつに重厚さがあります。この重厚さはどこからくるのでしょうか。この絵には、厚紙が使われています。よく見ると、和紙のような吸水性のよい薄紙を重ねた、厚さ1mm程度の合紙のようです。水性絵の具の幾層もの塗り込みに耐えます。また、表面のわずかな凹凸が、光を乱反射し、地肌を“のっぺらぼう”に見せません、深さを作ります。例えば、画用紙を使わず、板を使えば異なった画面が作れますね。作家は、自分が目指す表現を求めるため、使用する材料にも厳しい目を向けます。
-
カクテルハットは細い木の先にぶら下がっています。この木は、しっかり塗り込まれたベージュの上に、コラージュして作られています。そして影がベージュ面に落ちています。地面はレース。肉筆で描かれた部分が主役だけに、よほどしっかり描いていないと現物の強さに負けてしまう。厚手の紙に水彩絵の具で深いマチエールを作っています。そこに精密に描かれた洋服のまだらな模様、下にいくほど黒く、レースと溶けあう。物憂い頭部は、不安感のある黒のコラージュに融和しています。シュールレアリストの作品ですね。
-
これはスカート部分です。白い部分は光が当たっているところ、黒い部分は影か模様のようです。コラージュされた黒いレースに視覚的につながるよう、レース模様を採り入れて描いたようです。油絵の具の場合、厚く塗り、表面を炎で焼くと、このような焦げた模様が現れます。しかしこの絵は、水彩絵の具で描かれているため、焼くことは不可能です。やはり、手や鋏と同じように極細の筆で細かく描いたのでしょう。彼の作品はコラージュだけではなく、絵の具での描き方も驚くべき技術があるのです。