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詩的で繊細な画風で世界を魅了。イラスト・ユーロ推薦のひとり

| 2019年03月01日 23:00 | 吉村正臣 |

Gabriel Pacheco ガブリエル・パチェコ (イタリア)

L’ATELIER DE COEURS
愛のアトリエ

L'ATELIER表紙

仏語版・イタリア語版 翻訳付
メキシコ生まれ。’97年からイラストレーターとして活動す。詩的で繊細な画風が認められ、数多くの国際コンクールに入賞。韓国CJ絵本賞受賞、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞ノミネート、’07年ポルトガルのイラストレーションビエンナーレに選出。’07,’08,’11年ボローニャ国際絵本原画展に入選。’09年ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞。イラスト・ユーロでもご紹介した絵本<La Belle et la Bête>は、米国グラフィックアート協会の50冊に選出。イタリアの有名なイラストレーション展「le immagini della fantasia」の特別招待作家(’14年)に。今や世界的な作家です。

主人公の男性マティアスの仕事は、心の修理すること。仕事のかたわら、密かに「心」の製造も手がけています。それは思いを寄せる女性ベアトリスへの贈り物でした。彼女には人を愛する心がないのです。毎春「心」を届けますが、いっこうに振り向いてはくれません。自分の心を削りながら、贈り物の「心」を作っていたマティアスでしたが、心をすべて使い果たしてしまったのです。もう贈り物を作ることはできなくなりました…。冷淡な態度をとりつづけるベアトリスと、ひたむきで静かな愛を捧げるマティアスの愛のお話です。

この作家の画風がよく示されたブルーの美しい作品です。絵の地肌を幾層にも水分量を変えた水性絵の具で塗り、補色の淡い色を重ね、時には拭き取ったりしたかも。深い静けさを与えてくれます。また、奥行きの広さが表現され、物語の緊張感が生まれています。まさに空間から言葉が聞こえてくるような絵です。そんな全体の中にトーンを変えた画面が重さを和らげています。若い男女もカワイイ。

≪翻訳の一部≫   翻訳:泉りき

マティアスの仕事は、心を修理すること。
作業場で凍った心を火にかけた鍋で温め直し、銀の針で傷ついた心を縫い合わせる。

ピンセットで遅れがちな心の針を調節する。過去を振り返ることで、立ち止まってしまわないように。
夜になり、人々が眠りにつく。街が静まりかえると、作業場からは謎めいた音が。
マティアスには秘密にしていることがある。
日が沈むと、作業場に閉じこもり、心の制作に没頭する。
マジパンで柔らかな心を。強い心は磁器で作る。澄んだ心はガラス製。
ひとつ作り終えるたびに、木製の小さな箱にしまい、鍵をかける。

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下北沢の雑貨店「ペッシュ」の店頭でご覧いただけます。
この絵本のご紹介:http://illust-euro.ocnk.net/product/405