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王の権力欲が、悲劇を生む=ホメロスを原作としています

| 2020年05月21日 10:03 | 吉村正臣 |

Daniele Catalli ダニエ-レ・カタッリ(イタリア)

La bataille des grenouilles et des souris
カエルvsネズミ

フランス語 翻訳付
出版社:Amaterra

 

ダニエ-レ・カタッリは、ローマ出身(1979年生まれ)で、現在はトリノ在住です。イラストレーター、グラフィックデザイナー、舞台美術家、絵本作家などの顔を持っています。この絵本では、文章も手がけました。童話や神話を現代風に脚色し、絵本や絵画、パブリックアート、演劇などの世界で表現しています。DFRG Press Londonというアーティストブックの出版社を立ち上げたことでも知られています。

原作の「カエルとネズミの合戦」(蛙鼠合戦)は、一説によると古代ギリシャの詩人(ホメロス)によって書かれたといわれています。今回の絵本の作者二名は、原作からテーマや中身を大幅に改変し、戦争の愚かさを描いています。ネズミの王の末っ子が、カエル王に名誉を傷つけられたと、ネズミが開戦布告。カエルたちは受けて立つことに。剣の名手にして非戦論のカエル、プラシデュス・デュマレの声はかき消されてしまいます。「戦争では一人残らず死ぬことになる」という彼の言葉どおり、多くの兵士が亡くなり、かつて生きものたちがいた豊かな池はすっかり荒廃。それでも双方の王は、戦いのあと勝利宣言をし、自分たちの名誉は守られたと言い放ちます。

子どもたちに、王(独裁者)の権力欲が、悲惨で無意味な結果を生むことを教えています。ホメロスは世紀前8世紀頃の人とされ、その頃から21世紀の現代においても、この教訓は語らなければならないテーマなのですね。

絵の蛙の描き方や、動作は鳥獣戯画を思わせます。鳥獣戯画は、当時の世相を風刺して動物や人物を戯画的に描いたもので、ウサギ・カエル・サルが擬人化されている部分はよく知られています。まさに、よく似た作品です。ペン、油性クレヨン、水性絵の具などが使われ、さらに手作業も工夫があります。特に、画面が、さまざまに切り抜かれ、複数ページが重なって見える仕掛けがあります。

≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき

これはある一日の物語だ。ネズミたちがカエルに対して挑んだのだ。

そもそもの発端は、こんなふうに始まった。いつもと変わりない、早朝のことだった。のどが乾いた一匹のネズミが、大きな池の岸に近づいた。たどりついて、ほっと一息。水が飲みたい、その一心でやってきただけだ。このあと起こることなど、よもや想像もしなかった。

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