荒々しい自然を本のように読むための、詩的な招待状
| 2025年05月08日 05:00 | 吉村正臣 |
WILLY WANGGEN ウィリー・ワンジャン (フランス)
Fjord
フィヨルド
フランス語:翻訳付
出版社:HongFei Cultures
ウィリー・ワンジャンは、フランス北東部、森林、湿地、農地、史跡の保護地域であるヴォージュ地方に住む作家兼イラストレーターです。パリで哲学とアジア言語を学んだ後、中国で芸術、文化、出版の分野で数年間働きました。帰国後、彼は長らく先延ばしにしていた目標を達成しようと決意。それは、テキストと画像を通して物語を語る人になることでした。そしてこの「フィヨルド」が生まれました。彼の最初の本です。
物語は、賢者で優雅な鳥「カトマリン」は、他の海岸鳥(カモメ、鵜、ウミガラス)を集めて、彼の発見を話します。
自分たちが住む、この広大な「フィヨルド=峡湾」は、まるで「本」のようだと説明します。
『新雪に覆われていて、白紙のページのよう』『波の上にそびえ立つ大文字のMのよう』
『雨滴が一日を区切るコンマ』・・・図書館にある書物より古く、生き生きとしていると説明します。
「山々、森、雲、雨…は、私たちに合図を送る驚きに満ちている。そこで語られる物語を追うために、カトマリンの声に耳を傾けよう。」と紹介されています。
絵は、日本画のよう。作者は、東洋文化を学び、中国で絵画の勉強をしたことによるのでしょう。色合い、絵の具の塗り方など、静かで緻密な筆使いです。コラージュが大胆に使われ、画面を変化させています。貼り付けられた紙片も、肉筆で描かれているようで、カモメ、鵜など鳥達の精密な筆致に比べ、氷河や黒雲など荒々しく表現。フィヨルドの厳しい自然を象徴しています。
≪翻訳の一部≫ 翻訳 : 泉りき
ある日、カトマリンは海岸の鳥たちを集めて言いました。
「親愛なる皆さん、私はある発見をした!
私たちは、まるで大きな本の、ページの上にとまっているようなものだ!」
「本だって?!」鳥たちは驚いて叫びました。
「どこに?」カモメがぬれた足を持ち上げながら尋ねました。
「そうだ、どこに?」と、眉をひそめながら鵜が続けました。
「このフィヨルドのどこを見ても、本らしきものなんてないぞ!」
「そうだよ、フィヨルドに紙や表紙があるというのじゃないよ」とカトマリンは言いました。
「私が言っている本は、この崖や氷河のこと、ここは古い本なのだ。そして、今吹くこのそよ風のように現在の本もここにはある。」
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