人気絵本作家の新作。ユーモアのある力作です

｜ 2022年10月21日 22:00 ｜ 吉村正臣 ｜

anne herbauts  アンヌ・エルボー (ベルギー)

Sous la montagne
山の不思議な食料品店

フランス語　翻訳付
出版社: Casterman

ベルギーを代表する人気絵本作家です。ブリュセル高等美術学校で、イラストレーション、アニメーションを学びました。常に、話題の作品を発表し、ヨーロッパ各国、アジア、アメリカにも紹介されています。

彼女の最新作です。霧が立ちこめる寒い地方のお話です。山の中をくりぬいたような状態で、人びとは暮らしています。そこに一軒の食料品店があり、村人が集まる場所となっています。店には一匹の猫がいます。この猫、どうやら日本の「まねき猫」にあたる存在のようです。

表紙は山里の冬の風景が描かれていますが、中ページは、うって変わってしっかり描き込んだボリューム感のある絵が続きます。猫の表情がとてもユーモアがあります。人々の描き方もおもしろい。

この作家らしく、いわゆるヘタウマなデフォルメでていねいに緻密に描れています。いろんな画材が使われていますが、すべて身近で皆さんも使ったことがあるものばかり。ですから、親しみがあり、あたたかく感じます。アンヌの良さが発揮された、よい作品です。

≪翻訳の一部≫　　　翻訳：泉 りき

大昔のこと、村人たちは、火の神さま・ヴァルカンにそっくりな、火山・ヴォルカンを作ろうとした。
完成した火山は、濃い霧と大量の煙を噴き上げたあと、死火山となった。
火山があった場所の真ん中には、やけどのようないくつかの山のあとと、赤い炭火が残っていた。
このあたりは霧に包まれ、冬の寒さが厳しかったので、住民は、それぞれの山にもぐって暮らした。
ある山の中は、食料品店になっていた。そこはなぜかあたたかい－

店内の奥には、棚がある。茶色い木製の棚は、天井に届くほど。
カウンターには、くるみ割りの猫がいる。
ほかには、時代もののレジがある。

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