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子供の目で描かれた不況と貧困。フランスで注目を集めました

| 2016年01月20日 16:15 | 吉村正臣 |

Daria Petrilli ダリア・ペリトーリ (イタリア)

Demain les rêves
明日があるから

demain表紙

フランス語
翻訳付

イラストを描いたダリア・ペリトーリ(1970年生)は、ローマ出身。イタリアや各国で絵本を出版。1995年、2011年ボローニャ絵本原画展に入賞。2009年リスボンのイラストレーションビエンナーレ、2015年第16回ベルリンイラストレーション&グラフィックアートビエンナーレにも作品が出展されました。
物語を書いたティエリ-・カザルスは、フランス出身。雑誌「カイエ・デュ・シネマ」のジャーナリスト、脚本家として、映画界で経験を積み、作家の道へ。 2012年 Joël Sadeler文学賞のほか、数々の賞を受賞しています。俳句に関する著作もあります。

絵本のテーマは「不況と貧困」。こどもの貧困が、社会問題となる今、7歳-8歳向けにフランスで制作されました。おとなが不況で生活に苦しむとき、そばにいるこどもはもっと苦しい。主人公の少女アガットは、過酷な仕事で両親をなくし、叔父と二人暮らし。失業者だらけの街は、生気を失い、陰鬱な姿に。おとなたちと同じように、うちひしがれていたアガットでしたが、自分にできることを思い立ち、行動します。

絵本は、こどもが食事をし、遊ぶことさえできず、未来を夢見ることさえ奪う現状を、静かに告発します。
こどもの目で描かれた不況と貧困は、フランスでも注目を集め、国営ラジオ局France Cultureに作家がゲスト出演し、新聞各紙でも取り上げられました。

たいへん重厚で不思議な画面です。シュールレアリズムの絵としてフランスで紹介されています。たしかに心象風景を描き、また文章に詩的な印象を与える絵になっています。この作家の他の絵画作品は明快な画風で女性を描き、シュールさを極めていますが、この作品は、わざと画面をぼかせ、ざらつき感のあるテクスチャを強調しているようです。手書きで下書きをしコンピュータで合成や画面の加工をしたのかな・・・と思いました。モダンさと古さが行き交う、不思議な画面です。

≪翻訳の一部≫  翻訳:泉 りき

その朝、アガットは、何とか起きようとした。
不況、失業、お金がない。
誰もが、この言葉しか口にしない。
ひとつ、ひとつ、工場は閉鎖された。
ショーウインドーは、かわりばえしないまま。
ほこりまみれの街で、みんなの心は折れてしまった。
角にある公園の木々も、新しい葉をつけることができない。

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