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エリトリアの子供・ナタンは、国を逃れヨーロッパを目指す

| 2024年03月15日 05:00 | 吉村正臣 |

Ximo Abadía シモ・アバディア (スペイン)

KHAT
カート-難民となった子どもの日記

フランス語:翻訳付
出版社: LA JOIE DE LIRE

 

シモ・アバディア(1983生まれ)は、スペイン・アリカンテ出身のイラストレーター。幼少期から米国やフランスのコミックに親しみました。マドリードで学業を修め、メキシコで数か月過ごしたのち、2009年最初のロマン・グラフィックを出版します。2010年、作品Clonkで成功を収め、バルセロナのコミックフェアで新人賞を獲得。2011年にはロサンゼルス・タイムズに大きく取り上げられます。2017年ボローニャ国際絵本原画展に入賞。この絵本は、アングレーム国際漫画祭2023「高校生が選ぶ優秀賞」に選ばれました。

2018年、スペイン・バレンシアの港に3隻の船が停泊した。そこには何百人ものアフリカからの移民が乗っていた。この本の作者シモ・アバディアは、エリトリア人のナタン(仮名)に出会う。独裁政権から逃れるため、幼いナタンは父とともに隣国エチオピアへ。そこでも難民として追われ、刑務所に送られる。強制労働、飢え、悪徳ブローカーの被害に遭いながらも、出会った人々との交流と持ち前の明るさでナタンは希望を失わない。アフリカ北部の国を転々とし、「豊かなヨーロッパ」をめざす。

バンド・デシネ(フランスのマンガ)と紹介されています。が、日本のマンガのようなコマ割りはありません。絵の近くにそれを示す文字が配置されて、文字がない絵も多くあります。
地の色は、全ページ『黄色』。アフリカの大地を示しているのでしょう。この大地で行われる行為が、クレパス(オイルパステル)で、日記のように描かれています。人々の行為は、具体的に描かれ、時に風景や家並みはゴシゴシと力を入れて大胆に塗られます。兵隊達に暴力を受けるシーン、収容所のシーンなど胸が詰まります。クレパスの荒いタッチが物語を深くしています。

ニュース映像を除けば、私たちは難民の運命についてほとんど知りません。フランスでも同じ状態のようで、そんな社会に一石を投じたと言われています。

<翻訳の一部>  翻訳:泉 りき

教師か軍人でない限り、食事は満足にできない。
パスポートを所有する権利がない。
ぼくは4歳のとき、エチオピアとの国境を超えた。お母さんはエリトリアに残った。国を離れる人を手助けするために。お母さんとはそれが最後になった。
お母さんの顔を思い出せない。

「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置するエチオピア。海に面していない内陸国だ。周囲をエリトリア、ジブチ、ソマリア、ケニア、スーダン、南スーダンの国に囲まれている。

30年に及ぶ戦争の痛手から、エチオピアはいまだに立ち直れていない。ぼくたちエリトリア人は、エチオピアで歓迎されるはずはなかった。
「くそ野郎」「人殺し!」「うっとうしい奴らめ!」「出て行け!」
お父さんは仕事と住める場所を探し求めた。

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