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表紙に仕掛け。触ると凸凹、手に取ったときの異質感が

| 2016年05月01日 09:00 | 吉村正臣 |

Marc Martin マーク・マーティン(オーストラリア)

Une rivière
川のむこうに

une表紙

フランス語 翻訳付
出版社:circonflexe

メルボルンを拠点に、国際的に活躍するイラストレーターです。これまで5冊の絵本を出版。すべて自然や環境をテーマにしています。絵本デビュー作のA Forestは、オーストラリア児童図書評議会がすぐれた新人イラストレーターに贈る「クライトン賞」を受賞しました。最新作のこの絵本も「3歳の子に語りかけるエコロジー」(フランスの雑誌Elleの記事より)にふさわしく、見る人を小舟にのせて、都市から自然へ、スローな旅にいざないます。

都会の高層マンションに暮らす女の子が、外の風景をながめるところから、物語がはじまります。街を横切る川は、どこまでつづいているのだろう?どんな風景が待っているのだろう?船に乗って、たどる旅が始まります。市街地を離れ、工場地帯、農地、さらにはジャングル…そして海へと船は進みます。思いがけない自然の風景との出会いが、一本の川を通して繰り広げられます。

不透明、透明水彩で描かれています。たっぷり筆に絵の具をつけ大胆に、また、細い筆で細かな線書きで、インクや鉛筆で、変化をつけたり精度を上げたり、なかなか達者な絵です。また、どこかで見た筆のタッチなので、親しみやすい作品となっています。

表紙に仕掛けがあります。川辺の黒闇の中の小動物、草花が、触ると凸凹していているのです。プレス加工をして、手に取ったときの異質感を狙っているのでしょう。

≪翻訳の一部≫    翻訳:泉 りき

窓のむこう、川が見える。
川の流れは遠くまで広がる。
すわったままだと、そのうちに見えなくなる。
川を渡っていけたら、とときどき思う。
金色の船で、遠くまで運ばれて。
川は、どんなところへ連れていってくれるだろう?
川は、市街地を横断し、橋をゆっくりとくぐる。
先へ先へと急ぐ、たえまない車の流れとは正反対。

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