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紙をコラージュ、華やかな衣装の役者を色鮮やかに表現

| 2019年12月13日 22:00 | 吉村正臣 |

Elsa Huet
 エルザ・ユエ (フランス)

La petite Lune en papier
紙でできた月

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フランス語  翻訳付

 

出版社: bilboquet

1979年オート・プロヴァンス地方に生まれ、子供時代を過ごします。マルセイユの美術学校で学び、ブリュッセルの王立美術アカデミーに一年間留学します。絵本のイラストレーターとして、フランスのほか、作品は韓国でも出版されています。コラージュ、リノリウム版画を得意とするほか、学生時代に学んださまざまな技法を組み合わせて表現しています。
絵本の主人公は、移動劇団の舞台装飾である紙製の月。テレビの普及とともに、劇団は人々に忘れ去られ、上演の機会がありません。華やかな衣装のイタリアの即興演劇にヒントを得て、登場人物を色鮮やかに表現。失われつつある移動劇団への愛着をこめた一冊です。

とても色あざやかな絵本です。タイトルに「en papier=紙製」とつけられています。その名のとおり、さまざまな材質の紙をコラージュ、イラストを完成させています。あるページには、和紙のような、繊維が残った薄い紙や、金泊が入った紙が使われています。貼り絵で描いた上から極薄い和紙を貼って、イラストが透けて見える効果を出したものがあります。
またあるページは、絵の具で描いた紙を切り抜いて貼っています。紙の繊維の透けや、ほぐして繊維を出して貼るなどで、重厚な色彩を出しています。
とてもていねいな仕上げです。
また、色彩感がよい。大胆で、いわゆる“派手”と言うところがあると思えば “しぶい” と思わせる幅の広い感性で描かれています。
和紙のコラージュは、日本ではよく目にします。が、ヨーロッパでは、和紙を使った作品はめったに見ることはありません。そんなことで、ユニークな作風と思います。

≪翻訳の一部≫   翻訳:泉りき

紙でできた小さな月は、星も地球も太陽も、何もない空の上にいました。
どのようにしてこの場所にたどりついたのか、月は知りませんでした。

周囲はただ、白く冷たくぽっかりと空いていました。
「ここはたぶん、お芝居で使う小道具を売ってるお店の中。まもなく誰かが、舞台で私が必要になって、買いに来てくれるはず」
気持ちを落ち着かせようと、月は自分に言い聞かせます。

ある夜のこと。霧の立ちこめるところから、ひとりの老人がランタンを手にして現れました。
友人で、劇場の小道具担当・ジャンでした。ジャンはいつだって、月を大切に扱っていました。
「やっとみつけたぞ。霧の中じゃ、望み薄だと思っていたが。おっ、こうしてはおれない。さぁ、他の連中がいるところへ急ごう!」
「連中?ってことは、みんないっしょだったの!」

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