ヨーロッパの一流イラストレータ イタリア、フランス、ベルギー、ドイツで活躍中のアーティストを紹介
   
SSL グローバルサインのサイトシール
 

ノルウェーの作家。古さと新しさが折りあった珍しさがあります

| 2016年10月24日 04:50 | 吉村正臣 |

Stian Hole  スティアン・ホール(ノルウェー)

LE CIEL D’ANNA
アナの空

le ciel表紙-650

フランス語 翻訳付
出版社:Albin Michel Jeunesse

1969年生まれ。オスロ国立芸術大学で、グラフィック・デザインを学びました。絵本デビュー作が、2005年ノルウェー文化省の絵本賞を受賞。2007年、絵本L’été de Garmannで、ボローニャ・ラガッツィ賞を受賞し、一躍有名になります。その後も2009年フランスの絵本賞・ソルシエール賞(アルバム部門)受賞するなど、フランスでも注目の作家。

主人公は、お母さんを亡くしたアナ。アナ以上に悲しみ、うちひしがれているのはお父さんです。アナはお父さんを見守り、立ち直らせようとします。つらい日常から離れ、ふたりが旅するのは、鏡の向こうの国。かつて出会った人や亡くなった人たちが暮らす場所を訪ねますが、お母さんはいません。アナはそのとき思います。お母さんは親しい人たちに囲まれ、幸せにしているのだ、と。ふたりの心象風景の旅は、日常生活に戻る決心がついたところで終わります。

冒頭のページで「そろそろ行かないと遅れる」とお父さんが言います。次の見開きで、教会の鐘が鳴ります。最後のページでアナが言います。「パパ、急いで。そろそろ行かないと遅れちゃう」と。お父さんの黒いスーツ、教会、おそらくお母さんの葬儀なのでしょう。ふたりは愛する人の死を受け入れ、歩き出します。

とても奇妙な画面。シュールレアリズムの絵です。頭に次々と浮かんできた物語を、目の奥のキャンバスに焼き付けていったよう。多くの絵が、空に漂う物語が描かれ、突如しっかりした画面が。何を語っているのか、物語の中に入り込みたくなります。画面は、写真を加工、また、手で描いた部分などをコラージュ、さらにドローイング、PCでの加工とテクニックをミックスして仕上げているようです。

≪翻訳の一部≫   翻訳:泉 りき

「rêver(夢見る)は、前から読んでもうしろから読んでも同じね。ressasser(何度も同じ話を繰り返す)も」アナは言う。
「それと、きみの名前・アナもそうだよ。さあ、そろそろ行かないと遅れるよ」パパが返事をする。
アナはパパを見ていないのに、パパが落ち着かないのを感じる。どこにいてもアナは、パパの存在を感じる。すぐそばに、草むらに、メッシュの髪に、首のほくろの中に。アナにはわかっている。胃が痛むとき、パパはじっとしていられないことを。

le ciel4-700le ciel5-700le ciel13le ciel11-700

この絵本のご購入は:http://illust-euro.ocnk.net/product/325