カラフルな小鳥たちが、約40羽。鳥ファンにはたまらない一冊。
| 2025年09月27日 05:00 | 吉村正臣 |
Virginie Rapiat ヴィルジニー・ラピア(フランス)
Le miroir aux alouettes
カラスのうまい話
フランス語:翻訳付
出版社:Balivernes
イラストを描いたヴィルジニー・ラピア(1974年-)は、フランス・ブルゴーニュ地方を拠点に活動しています。1999年からUSAAB(ブルゴーニュ高等応用芸術学校)でデザイン、イラストレーションなど応用美術を教えています。絵本にはさまざまな鳥たちが登場し、まさに鳥の楽園です。華やかで精緻に描かれた鳥たち。鳥ファンにはたまらない一冊です。
(今回の絵本は異なりますが、ヴィルジニー・ラピアは、イラスト制作では、厚手のバーガンディ色の紙を好んで使用します。バーガンディ(Burgundy)色は、彼女が暮らすブルゴーニュ地方の赤ワインの色から生まれたとされる、わずかに暗い紫みがかった赤色です。これにより、色彩の表現に非常に特徴的な効果が生み出されています。)
ある日、さまざまな鳥たちが暮らす静かな谷間にカラスが現れます。カラスは鳥たちを誘い、おいしい果実と引きかえに、自分の鳴き声「カーカー」と、黒い羽根の色をまねさせ、支配しようとします。多くの鳥が次第にカラスに従います。
しばらくして別のカラスが谷間に現れます。「カーカー」とは鳴かず「ホーホー」と鳴くカラスは、皆が従うようすに危機感を抱きます。「ホーホー」と鳴くカラスに興味を持った数羽の鳥たちは、隣の谷へカラスを追ってついていきます。そこではさまざまな姿で、さまざまな鳴き声をした鳥たちが自由に暮らしているのを見て、カラスのまねをしなくていい、もとのままでいいと気づくのです。
たいへん豪華な感じのする絵本です。多彩の色彩、緻密な背景に、生き生きとした鳥達がリアルに、さまざまな動作で美しく描かれているからでしょう。先ず、全編、鳥達の背景は、すべて線描画。赤一色で、草花、木々、水面が、まるでエッチングで描き出したような絵です。
その赤い線画を背景に、小鳥たちが、華やかな色彩で描かれます。これはきっと不透明水彩絵の具でしょう。羽毛の一つ一つが緻密です。約40羽の小鳥が登場、最終ページにそれぞれの名前が紹介されます。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
その朝、ナラの木の上を、一羽のカラスが旋回した。秋の丘の風景を、その影がおおう。
黒々とした羽根の美しさに誘われ、若いムクドリたちがカラスに近づく。
「フィッ、フィッ」ウソがカラスにあいさつする、
「プリュルルルル、プリュルルルル」シマクイナはさらに目立つように声を出す。
ウソとシマクイナに、カラスが返事をする。
「カー!カー、ぼくの言うこと信じてよ」
「カー?きみを信じろって?」考え込んだ二羽が、それぞれにくりかえす。
やりとりを聞きつけたアオガラが、すばやくそして歌うように反応する。
「わかった!カー!きみのこと、信じるよ」
カラスは即、アオガラに果実を与える。お礼のしるしだ。
その光景を見ていたクロジョウビタキが、勇気を出して言う。
高く通る声で「カー!ついていくよ」カラスからごほうびが出る。
翌日には、小鳥たちはもう、それぞれの声でさえずることはなくなった。
みんな「カー」と鳴く。そのせいで、鳥のあだ名は「カーカー」になった。
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