あれだけ大事にしていたぬいぐるみを見向きもしない!
| 2026年02月26日 05:00 | 吉村正臣 |
Clémence Monnet クレマンス・モネ (フランス)
Hector et les bêtes sauvages
エクトールがついている

フランス語:翻訳付
出版社:Seuil Jeunesse
イラストレーターのクレマンス・モネ(1980-)は、オルレアン高等美術デザイン学校(ESAD)を卒業後、絵本や出版関連のイラストレーターとして活躍するほか、子供服、舞台美術、児童劇場の衣装デザインを手がけています。水彩、墨汁、色鉛筆などの技法を組み合わせ、日常生活のシーンを詩的に描きます。
パリにアトリエを持ち、作品を創作。定期的に展覧会を開催し、SeuilやHachetteといった大手出版社から絵本を出版しています。
ぬいぐるみのエクトールは、ひきだしの奥に捨て置かれています。持ち主の「あの子」はすっかり大きくなったつもりで、ぬいぐるみなど眼中にありません。赤ん坊の弟にイライラし、眠れないあの子を見かねて「助けてあげる」とエクトールは声をかけます。両親にとって、自分はいないも同然だと感じています。エクトールはあの子によりそいます。弟の夜泣きを「野生動物の叫びみたいでこわい」と話していたあの子は、エクトールのおかげで心の不安や寂しさを乗り越え、弟を思うほどに成長します。
きれいな水彩画ですね。濁りやすい透明水彩絵の具ですが、濁ることなく透明感のある画面を作っています。描く前に、画面上の構成や描くエレメントを十分に計画して、そしてさっとスピードよく描いているようです。筆のタッチから、筆にしみこませた水分量、絵の具の添え方などわかってきます。絵の主体は、しっかり色を重ねて重厚に。重々しい物語も、爽やかな絵本に仕上げています。絵の上手な人ですね。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
あの子は大きくなって、ぼくをひきだしの奥につっこんで、おきざりにした。忘れられた。あれだけ大事にしていたぬいぐるみに見向きもしないくらい、大きくなった。
実際のところ、それほど大きくなったわけではなくて、お昼寝はしたくないのだけど、さすがに今日はとても暑くて。あの子は親指を吸い、人差し指を鼻に突っ込んで、ハンモックとかいう、秘密を隠したみたいなくぼみの中で眠ってしまった。赤ん坊みたいに寝てる。ぼくなんかいなくても。ほんものの赤ん坊は、母親のお腹から出てきたばかりの生まれたて。新品のぬいぐるみに囲まれ、目をぱっちりあけて笑い、甘いおっぱいを飲む。で、あの子ときたら、通学カバンではなく、カラテ・チャンピオン(女子)バッグで学校へ行き、絵の具セットを持ち、補助の車輪なし自転車に乗っている。
母親の横たわるデッキチェアのそばで、赤ん坊はもぞもぞと動き、ゆりかご形のベビーベッドがきしむ。桜の木の下に寝転がっているあの子は、悪い夢にうなされている。




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