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飼い主の都合で、虐待され放置される犬

| 2014年11月09日 09:30 | 吉村正臣 |

Sara サラ (フランス)

enchaîné
つながれた犬

enchaine 表12

フランス語 翻訳付

飼い主の都合で、動物が虐待されたり、放置される…。フランスでもよくあるようです。これは狩りのときだけ、外に連れ出され、それ以外は檻で鎖につながれた犬のお話です。解放されたいと思う犬。いったんは外に出るものの、どうしていいのかわからず、檻に舞い戻る。犬を解放するために、誰かがとった行動とは。人間に虐げられた動物の悲しみや怒りを、静かに告発しています。これは犬だけでなく、すべての動物、人間にも置き換えうる物語です。

イラストレーターのサラはフランス在住。2005年ブラチスラヴァ国際絵本原画展で児童書の分野で権威ある賞の一つ「金のリンゴ賞」を受賞しています。大ベテランですので、このほかにも、たくさん出版されています。

この作家の特徴である、紙をちぎって貼る作品です。紙の切り口に紙の繊維がはみ出し独特の風合いを出しています。黒とワインカラーに近い深紅が基調。そこに白い老犬が切り紙で描かれる。この作家は、描写力がすばらしく、切り絵でありながら、とてもリアル。かわいそうな犬の表情に、心が痛くなります。深紅のコントラストで描かれる血の滴り、不安を呼ぶ黒い大きな鳥、犬をつないだ鎖、優れた表現です。かなしいお話を読みながらご覧ください。

<翻訳の一部>  翻訳:泉りき

あの犬はもう何年も、農家の片隅でつながれたままになっている。
飼い主のおじさんは、言った。
「あいつは、なつかないんだ。だから、ああしてるんだ。なついてもらわないとな」

(犬の声)
檻の中は、何も起こらないし 誰も来ない。
一歩外に出れば、トリュフだって見つけるさ。
自由に過ごせる場所が、すぐそばにあるはずなのに
それはとても遠い。
犬は考えるたびに、うめき声をあげる。

日が暮れると、えさがもらえる。
「さあ、こっちだ」飼い主の姿を見つけると
犬はうれしくて、吠えつづける。
鎖が外れるほど激しく、檻の中を跳ね回る。
「さあ、落ち着くんだ」
えさを見るだけで、こんなにはしゃぐなんて
腹が減っているんだな。 飼い主は思い込んでいる。
でも、一日中じっとしたままで、おなかなんてすくはずもない。
それでも、えさの時間は、犬にとっていちばんの楽しみだ。
わずかになでてくれるのを  ・・・・・・

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