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デビュー作Louveで一躍人気作家! その年の絵本新人賞を受賞

| 2019年08月21日 09:00 | 吉村正臣 |

Fanny Ducassé ファニー・デュカセ(フランス)

Rosalie et le langage des plantes
ロザリーと魔法の森

フランス語 翻訳付
出版社:Editions Thierry Magnier

 

物語とイラストを制作したファニー・デュカセ(1986年生まれ)は、新世代の絵本作家として注目を集めています。イラスト・ユーロでも人気となった2014年のデビュー作Louveで一躍人気作家となり、その年の絵本新人賞を受賞します。大学で現代文学を学び、さらにファッションの名門校・パリ・クチュール組合学校で学んだ異色の経歴の持ち主です。
この絵本も、発売と同時に全国紙リベラシオンや雑誌テレラマで取り上げられ、絶賛されました。

少し風変わりで、夢見がちなロザリーがこの絵本の主人公です。飼い猫とネズミが同居するアパルトマンで暮らしています。ある日トースターが故障し、がらくた市に探しに出かけます。そこに捨てられていた本に出会ったことで、ロザリーの興味は一気に植物へ。そして森へとたどりつきます。不思議な花々が咲き乱れる森で、ロザリーは植物の仲間になりたい、意思疎通したいと願います。ファッションを学んだ作家らしく、主人公の髪型、部屋着の着物、部屋のインテリアなど、取り入れたくなるものがいっぱい。テキストにも、fourre-tout(旅行に便利な、口が大きめのバッグ)、défilé(ショー)などのファッション用語がちりばめられていて、とてもおしゃれな一冊です。

おしゃれな女性やインテリアなどが、細いペンで描き、そこに透明水彩か、で着色。その際、重ね塗りをし、微妙な色の変化を作っています。また、この作家のお得意とする木々、木の葉、草花が、緻密に細部まで描き込んだ作品です。ペン描きの単純さを、色彩の重ね方でうまくカバーし、重厚さを出しています。しかし、部分にとらわれていることなく、紙面の白とのバランスよく構成されています。赤やピンクの色彩が画面に変化をつけ、この絵を爽やかに楽しくしています。

≪翻訳の一部≫    翻訳:泉 りき

にわか雨で、街全体がにじんだようです。イタリアカサマツの木より背が高い建物の最上階では、ロザリーが息を吹きかけ、ジャスミン・ティーを冷ましています。飼い猫のミラベルは足先まで伸ばします。そして三番目の家族、ネズミのクロック・セルは、干からびたクルトンで歯を研ぎます。森に咲くバラも、街の野良猫も、畑の野ネズミも、ロザリーたちのように屋根の上で転がる雨の音を聞いているのでしょう。

ロザリーは、草花が大好きですが、育てるのは上手ではありません。まめに世話をしても、植物はしおれ、数日もたてば枯れてしまいます。やさしいことばをかけながら水やりをしても、結果は同じ。こちらの気持ちが通じないのかと思うほどです。

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