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ルテニア地方に伝わるお話をもとに作られた奇妙な絵本

| 2016年05月17日 14:06 | 吉村正臣 |

Natali Fortier  ナタリ・フォルティエ(カナダ)

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プリュプク-ルテニア地方のお話より-

plupk表紙

フランス語 翻訳付
出版社: ROUERGUE

イラストレーターのナタリ・フォルティエは、カナダのケベック出身。サン・ジャック美術学校を経て、サンフランシスコ美術学院、パリ国立高等美術学校で学びました。イラストと文章を手がけたデビュー作<LILI PLUME>が、絵画部門でオクタゴヌ賞を、テキストが高校生のためのゴンクール賞をダブル受賞します。2003年には、ボローニャ・ラガッツィ賞に選出されます。現在はフランスに住み、出版社の書籍の装丁や絵本の出版、絵画や彫刻の制作もしています。

現在のウクライナ西部とポーランドの南東部にまたがる地域は、かつて「ルテニア」と呼ばれていました。絵本は、ルテニア地方に伝わるお話をもとに作られました。主人公の少年プリュプクは、絵本の<おやゆびこぞう>が大好き。絵本を見ているうちに、すっかりおやゆびこぞうの心境になって、森へと出かけます。ほんもののおやゆびこぞうは、道々小石を落としたことで、家に戻ることができました。一方のプリュプクは、拾った小石に助けられる始末…。新しいおやゆびこぞうの誕生です。

この作家の表現方法がいかんなく発揮されている作品。柔らかい芯の鉛筆で腕が動くままデッサンし、そこに水彩絵の具を加えます。鉛筆の黒の線がのこり、また、主となり、とても身近な絵となっています。が、随所に、ごしごしと塗られた鉛筆線が現れ、闇の世界が表現されます。また、奇妙な顔、不思議な木などが描かれ、恐ろしさを増します。この、リアルとデフォルメの変化に注目してほしい絵本です。

≪翻訳の一部≫    翻訳:泉 りき

プリュプクは、絵本を読むのをやめました。
突然、こわくなったのです。
「このお話と同じように、ぼくも森に捨てられたら、どうしよう?
なぜ森の中にある、おんぼろの家に住んでいるのかな?
パパもママも、お金も食べるものもないのかな?」
プリュプクが、大声で泣き出したので、母親がたずねます。
「どうしたの? おちびちゃん」
「ううん、なんでもない」
ママやパパに捨てられると考えたから…とは、とても言えませんでした。

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すみません売り切れました。絶版です。